第74話:そして賢者は体育祭を終え
さて、あまりもったいぶらずにそれからの話をすることにしよう。
まずは体育祭であるが……これは特に問題らしい問題もなく恙無く終了した。というのも、あの場で問題を起こしたキースについては何故か体調不良で帰宅したことになっていた。
一体全体どういう理由でそうなっていたのかは不明であるが、敢えて予想するのであればあのむっつり妖精の結界によるものなのだろう。
結界の外での認識を都合よく改変させているのかもしれない。そう考えると、やはりあの結界とんでもない機能を持っているな。結界という一芸に関しては上だと改めて理解させられる。
そしてさらには翌日の話になるが、急遽キースが親の仕事の都合で転校してしまったことが担任から告げられたのだ。
これにはクラスメイト達も騒然となった。特に女子生徒は阿鼻叫喚ともいえる惨状だった。
キースが転校したというあまりにも理解しがたい現実から逃避するためか、中には俺が汚い手を使って勝負に勝ってしまったからだというとんでもない暴論を言う奴もいた。流石に酷すぎて、俺以外のやつが抑えていたがな。
どうせ都合よく認識を改変するのであれば、最初からキースがいなかったことにしてほしかったものである。
まぁそんなことはどうでもいい。今回に関してはそれ以上に色々あったため、そちらについて考えなければならない。
「今後、どうやって動くかねぇ」
これまでと大きく異なるのは、彼女ら
「今迄みたいに姿を隠してもできなくはないが……それだと逆に怪しまれるか?」
別に俺自身、彼女らと敵対したいわけではない。むしろ彼女らも戦う者とはいえ、年下の女の子だ。危険な目に合わせようとは思わないため、手助けは必須。
だが戦いそのものに関わらせないようにすることは不可能だろう。なんせあいつら、
そうなると、万が一にでも俺が駆け付けられない状況で強敵と邂逅してしまえば詰む。時間稼ぎすらできずに敗北、ということも考えられる。そうしないためには、やはりある程度彼女たちも戦う者として成長してもらわなければならないだろう。
「世知辛なまったく……戦わせたくないのに、戦わせないとダメってのは」
だが失敗はできない。
その万が一が起きてしまえば、あの世界樹の子の洞から
一応今迄やってきた世界を渡る魔法の開発及びその魔力収集は第二案として考えてはいるが……向こうへ戻る魔法陣がまだ開発できていないことを考えると、確実性は劣るだろう。
ならば彼女らに戦ってもらうことは大前提。俺は後衛としてある程度サポートに徹し、危なくなったら助けるのが最善か?
「……まぁ、暫くはそれでいくしかない、か」
どっちみち、彼女らとは俺が戻るまでの付き合いになるんだ。あまり接触して関係を深めるべきではないだろうが……最悪の場合は忘れてもらえばそれでいい。
ふと思い浮かんだ後輩の顔を忘れるように頭を振った。
そしてもう一つ、あのドラゴンガールの発言について。
『そうもいかないんだよねぇ~じゃないと、アンフェが怒られるんだも~ん』
あの一言により、あいつらの組織……確か、
もしそれが出てきた場合は、彼女ら
「できれば一生出てくんな……ってわけにはいかないよな……」
はぁっ、と深くため息を吐く。
外を見上げればすでに夕方。部活もなく帰って行く生徒の姿がちらほらと見受けられた。
こういう平和を、あいつらにもずっと享受してほしいものだ。
「……きたか」
タッタッタッタッタ、と小刻みの良い廊下を駆ける音が扉の向こう側に響く。
別に急がずとも部屋も魔法書も、そして俺も逃げるわけではない。それでもああして急ぐのは、少しでも魔法書を読む時間を確保したいからだろう。
その足音が扉の前で止まると、息でも整えているのだろう。足音の主は少し間をおいてからその扉を開けた。
「よお、白神」
「こんにちは! 先輩!」
いつも通りの笑顔を見せる後輩。
その顔を見て改めて思う。
先輩らしく、ちょっとは頑張ってよかったなと。
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どうも、作者の岳鳥翁です。
いつも拙作を読んでいただきありがとうございます。
三章にあたる今回の体育祭編は如何だったでしょうか。
感想や評価などあれば是非是非お待ちしておりますというか待ってます。
カクヨムコン8にも10万文字を超える形で応募できたので、作者本人としても喜ばしい限り。引き続き拙作をよろしくお願いします。
さて、ご連絡。
次回からは四章に入りますが、また書き溜めや休息のためお休みをいただきます。
開始時期や投稿日などについては近況ノートに投稿しますので、またご確認ください。
よろしくお願いします。
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