第18話:学園への襲撃
私、赤園ねね! 孔雀館学園に通うごく普通の中学二年生!
……だったんだけど、ある日アルトバルト……アルちゃんっていうすっごくハムスターに似た子を拾ってから私の普通だった生活は一変しちゃったの!
邪悪なる陣営っていうすっごく悪い人たちがアルちゃんの持っていた宝石を狙っていて、私はその戦いに巻き込まれちゃった!
それでどうしよぉー! ってときにアルちゃんの持っていた宝石で私は伝説の騎士に変身! 邪悪なる陣営と戦うことになったの!
アルちゃんが言うには、この宝石を狙われてしまったから王子だったアルちゃんの住む
宝石が奪われてしまうと、私たちの住むこの世界も含めた全世界(アルちゃんが言うにはこの世界以外にもいろんな世界があるみたい! すごい!)の均衡を保っている
それを防ぐためには、
そんなこと、絶対にさせないんだから!
◇
「てことがあったの」
「変なこと言ってないで、早く課題を終わらせなさい。また先生に怒られるわよ?」
「変なことじゃないよぉ~」
すでに授業も終わった放課後の教室。
生徒であればすでに帰宅するなり部活に赴いたりしている時間であるが、未だにその場所には二人の生徒が残っていた。
「まったく……ほら、やり方は教えてあげるから頑張って解いてみて? 自分の力でやらないと意味ないわよ」
「ええ~舞ちゃんのケチ~」
「ケチで結構。せっかく生徒会がない日なのよ? 私はねねを残して帰ってもいいんだから」
「ごめんなさい!」
ねねがその場で机に頭をつけるようにして言うと、舞は困った顔をしながらも「しかたないわね」と息を吐いた。
どこかの同好会の住人とシンクロした瞬間である。
「アルトバルトもよ。あんまりねねを甘やかしたらダメだからね」
「ウッ……そういわれると耳が痛いアル……」
舞の言葉に答えたのは件の当事者であり、
ねねのカバンからそっと顔を覗かせた彼は申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「ぶぅ~舞ちゃん厳しいよ……せっかく二人で
「絆が深まったからって、ねねの課題を見逃す理由にはならないわよ。わかったなら、早く終わらせなさい」
「は~い」
しぶしぶといった様子でシャーペンを手に取るねね。
そんな彼女が間違っている部分を読書しながら指摘していく舞は間違いなく優秀だ。
事実今年から中等部でありながらも生徒会に所属し、かつ先日行われた中間テストでは学年首位の座を一年時からキープしているのだから誰もが口をそろえてそういうだろう。
そんな彼女がねねとアルトバルトのことを知ったのは、一週間ほど前の
舞とともに出かけると言ったねねに心配だからとこっそりついていったアルトバルト。案の定邪悪なる陣営の襲撃を受け、舞はねね達の戦いを目撃することになった。
そしてピンチに陥ったねねを助けるために舞が参戦。その身に青き水の騎士の力を宿し、以後ねねと共に戦う仲間となったのだ。
「そういえばアルトバルト。世界樹の宝石はあと一つあるんでしょ?」
「そうアル。ねねの持つ赤、舞の持つ青、そして最後の白アル」
「じゃああと一人、私たちの仲間になってくれる子がいるってことだね! どんな子なんだろうなぁ~」
ワクワクとした様子で手を止めるねねを舞がひと睨みして再起動させる。
しかし、ねねと同じくその最後の一人について考えを巡らせていた舞はアルトバルトに質問を続けた。
「そもそも世界樹って何なの? 私、あなたたちからまともな説明を受けていないのだけど」
「……あれ? アルちゃんしてないの?」
「僕はもうねねがしてると思っていたアル……」
「……あなたたちねぇ」
呆れたといった様子の小さなため息が再びどこかの同好会の住人とシンクロする。
そんな彼女の反応に対して、ねねは「あんまり詳しく覚えてないからアルちゃんよろしくぅ!」と説明責任をアルトバルトへと丸投げした。
「まず知ってほしいのはねね達のいるこの世界以外にもたくさんの世界があるということアル」
「ええ、それは知っているわ。所謂異世界ってやつよね」
「異世界! どんなところがあるのかワクワクしちゃうよね! もしかしたら本物のマジックナイトリンがいるかも!」
睨まれて再び課題に取り掛かる哀れな少女がここに一人。
「そうアル。その数多の世界と繋がって均衡を保っているのが僕のいた
「制御装置なの? これが?」
自身が持つ青い宝石に視線を向ける舞。
そんな重要なものを持っていていいのかと考えてしまう。
「でも制御装置なら、なんでこれで変身なんてできるのよ」
「世界樹の宝石の防衛機能アル。
「……なるほど。つまり、私たちはその世界樹の鍵の管理人に選ばれたわけね」
世界樹が危機に陥り、その管理権限である宝石を適性者へと譲渡。しかしそれだけでは世界樹を不正利用しようとするものから鍵となる宝石を守れない。だからこそ、譲渡した管理者に鍵を守る力――
アルトバルトの説明に納得して見せた舞は静かに頷いた。
そして難しい説明だったのか、授業後であることも相まって疲れていたねねは舟を漕いだ。
「……ねね」
「……ハッ! ね、寝てないよ!? それにほら! 課題はもう終わらせたもん!」
ほらこれ! と舞に見せた課題はもうすべての回答欄が埋められていた。
「パッと見ただけでもいくつか間違えてるけど……まあいいわ。とりあえずはこれで出してきなさい」
「え、ええ~間違えてるのぉ……」
「最後まで埋めてるから偉いわよ。再提出だったらまた手伝ってあげるから」
舞の言葉に力なくは~いと答えたねね。
そんな彼女の様子を見て、困ったように笑って見せる舞であったが、直後その身を襲った感覚に対して顔を強張らせた。
「ねね! アルトバルト!」
「舞ちゃん! グラウンドのほうだよ!」
「もうすでに結界は張っているアル!」
瞬時に反応して見せた三人はすぐさま教室の窓から外を見た。
結界内に取り込まれたことを表すショッキングピンクの空。そしてそんな空の下、グランドには一人の男が立っていた。
男は一人、校舎に向かって叫ぶ。
「ここにいるのはわかってんだぞ……
彼の名はイーヴィルポーンのプリッツ。
ねねが
「あいつこんなところまで……!」
「舞ちゃん行くよ!」
「わかってるわ!」
「「『セットアップ! ジュエル!』」」
◇
「は、はわわわわわ!!! なんかとんでもないことになってるぅぅぅ!!!」
そんな頃、一年生の教室にて忘れものであったノートを取りに来た少女は予想だにもしない戦いを目撃することとなったのだった。
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