秋の味覚の王者はやっぱり鮭だとおもうが山菜のミズの実も捨てがたい。
さて秋は一年でも最も食べ物が豊富な季節だ。
林にはクリやドングリ、とちの実が落ちるようになるからそれを拾うし、アケビもなるしキノコも食べられる種類は多くなる、そして産卵のために鮭が川を毎年遡上する。
だから大体の男は皆で川の鮭を取り、冬に備えて塩漬けにして干す。
鮭は色々健康にも良い魚だしな。
一方大体の女はキノコを探しながらミズの実も探す。
ミズとはウワバミソウのことで春には新芽、夏には茎が食えるが、秋にはむかごを採るのだ。
ミズは繁殖力も強く林の中に豊富に生えており、動物たちも秋にはその実を食べる。
それこそ熊や鹿は、実のところだけきれいに食べていくが、辺り一面に生えているから食われた所で全く問題はなかったりする。
俺たちに家族はだいたい男だ女だと別れずに、食料採取は一緒に行動する。
双子たちがるんたったとうきうきしながら、キョロキョロ左右を見回して林の中を歩いている。
「どこかなどこかなー」
「どこかなどこかなー」
俺は双子が転ばないように手をつなぎながら双子に言う。
「おう、どこだろうな」
双子は首を傾げている。
「どこー?」
「どこー?」
俺は林の中を見渡す。
「もうちょっと奥かもなー」
双子が俺を見上げて答えた。
「もっとおくー?」
「もっとおくー?」
俺はそれに頷く。
「多分だけどな」
ウワバミソウは湿った場所に生えることが多いので、林の奥の方に生えていることのほうが多い。
イアンパヌが微笑みながら双子に言った。
「焦らなくてもないわよ」
双子がウンウン頷く。
「だいじょぶー」
「だいじょぶー」
雑木林をてくてく歩き続け栗や団栗、栃の実などを籠に拾い上げながら奥に進むと、やっとお目当てのウワバミソウが群生している場所にたどり着いた。
「あたー」
「あたー」
ミズの実は、ちょうどあずきくらいの大きさで葉の付け根に点々とつくので、基本的には実のついている葉先部分だけをちぎって採取する。
「んしょ」
「んしょ」
双子はちっちゃな手を伸ばして葉っぱをちぎって喜んでる。
「とれたー」
「とれたー」
イアンパヌと上の娘は黙々と葉っぱと身を取っている。
こういった単純作業には女性は強い。
男は単調な作業にすぐ飽きるので結構辛い。
そういう時は気分を切り替えて食えるキノコを探したりもする。
「とどかないー」
「とどかないー」
まだ背が低い双子にはちょっと枝が高くなると手が届かなくなるので、そういう時は俺が抱えてやる。
「これでどうだ?」
手が届くようになった双子はちぎった葉っぱを掲げてバンザイしてる。
「とれたー」
「とれたー」
やがて十分な量が取れたら、家にかえることにする。
取れた実はまずは水洗いをし、塩を入れた熱湯でサッと茹でれば赤っぽかった実がきれいな緑になるのでそれを塩もみして食べる。
ミズは茎の部分はシャキシャキとした歯ごたえがあり、実はムチンが含まれているのでモロヘイヤのような粘りけがあってうまい。
「んーうまいな」
双子も上機嫌だ。
「うまー」
「うまー」
その他のメニューはキノコと鮭の煮物で今日はなかなか豪勢だぞ。
「この季節にたべられる草は結構少ないからありがたいわよね」
イアンパヌの言葉に俺は頷く。
「そうだな、後は明日葉くらいだしな」
しかし明日葉は苦味があるので子どもたちには不評だ。
「にがいのいやー」
「にがいのいやー」
うーむ、栄養的にはとてもいいのだが、ほうれん草とか明日葉とかの緑野菜は子供は嫌いなのが多いのが困ったものだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます