秋の楽しみといえばいえばサツマイモの芋掘りだよな

 さて季節は夏から秋に変わって涼しくなってきた。


 この季節は焼き畑に植えた雑穀や芋が実る収穫の季節でも在る。


 俺たち家族は収穫のための道具やかごを持ってみんなで畑にやってきている。


 雑木林に育った木々をやいて灰にし、そこを軽く掘り返し、陸稲、大麦、小麦、稗、粟、黍、蕎麦と言った穀物、瓢箪や、荏胡麻、胡麻、大豆、小豆、緑豆、と言った豆や胡麻類、牛蒡、蕪と言った根菜、里芋、長芋と言ったイモ類、筍や芥子菜、菜種、漬菜、紫蘇などの葉野菜に加えてジャガイモ、サツマイモ、ネギなども適当に植えて、放ったらかしにしつつ収穫の時期になったら収穫するということをしている。


 収穫量を増やすための手間ひまをかけるという概念は縄文人にはないのだ。


 秋になれば栗や団栗、栃の実やキノコ、鮭や鱒なども取れるしな。


「おいもー」

「おいもー」


 双子がつるを嬉しそうに引っ張ってるのはサツマイモだ。


「うーんうーん」

「うーんうーん」


 一生懸命引っ張ってるがなかなか出てこない、がそのうち引っ張り出せたようだ。


「でたー」

「でたー」


 ぐっとサツマイモを掲げてみせる双子。


 そういえば幼稚園や小学校で芋掘りをた時は楽しかったようなきがするな。


「おう、がんばってとったな」


 俺は双子の頭をなでてやる。


「がんばったー、ねー」

「がんばったー、ねー」


 双子がお互いに顔を見合わせて言う。


 当然のことだが本来ジャガイモもサツマイモもこの時代の日本には存在しない。


 大家さんが買っていたもの埋めてみたらうまく育ってくれたものだが、いまではそれなりに量が収穫できるようになってる。


「じゃあ、枯れ葉を集めて芋を焼くか」


「やくー」

「やくー」


 俺や双子以外はせっせと穀物の刈り取りをしている。


 土地を耕したり雑草取りをしたりしていなくても、収穫だけはしないといけない。


 収穫作業はけっこう大変なのだが子供の面倒を見るのも大変なので勘弁してもらってる。


 あと畑は村の共有財産なのだがそこまで細かい取り決めもない。


 雑穀は脱穀や炊事が大変だし実はあまり人気がなかったりする。


 その中でも例外的に人気なのはサツマイモだ。


 なんせ熱を加えて焼くだけで甘くてうまいものが食えるからな。


 この時代の甘味は希少だから人気にもなる。


 勿論縄文人は芋を食い尽くすようなことはしない。


 芋を水で洗って綺麗にしたら、地面に落ちてる枯れ葉を双子たちがちまちまと集めているのを尻目に俺は火おこしをする。


 弓切り式であってもそれなりに時間はかかるからまあ、ちょうどいいだろう。


 回転させた木の棒の摩擦で生じたおがくずが、摩擦熱で焦げだしたら枯れ葉に火を移し火を大きくする。


 でその枯れ葉の中に芋を入れてじっくりと熱を加えるわけだ。


「もうちょっと待ってろなー」


「まってるー」

「まってるー」


 落ち葉の焚き火を目を輝かせながら、じっと見つめてワクワクしながら芋が焼けるのを待ってる双子。


「まだかなまだかなー」

「まだかなまだかなー」


「まだもうちょっとだな」


「まだかなまだかなー」

「まだかなまだかなー」


「まだもうちょっとだな」


「まだかなまだかなー」

「まだかなまだかなー」


「ん、そろそろ焼けたかな」


「やたー」

「やたー」


 俺は他の家族にも呼びかける。


「おーい、芋も焼けたし休憩にしようぜー」


 イアンパヌが答える。


「はーい、そうしまーす」


 そして家族が焚き火の周りに集まってきた。


 木の枝で枯れ葉をかき分けて焼けた芋を取り出す。


「よーし、みんなたべる前にちゃんと水で手を洗えよー」


 俺がそう言うとみんな川の水で手を荒らす。


「あいでしー」

「あいでしー」

「わかってますよ」


 そして芋をみんなが手に取って食べる。


 やっぱサツマイモは凄いな。


 焼くだけで十分甘いんだから。


「んー、甘いなー」


 双子もニパッと笑い言う。


「あまーい」

「あまーい」


 イアンパヌたちも甘いさつまいもを食べてホクホク笑顔だった。


 やっぱ甘い食べ物は人を笑顔にするよな。


 まあ、その分食い過ぎと虫歯に注意ではあるんだけど。

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