春になったからみんなで雑木林へ出かけよう
さて、大分暖かくなり、草木も芽吹いて本格的に春になってきた。
俺達は家族全員+乳母役の女性も含めて、雑木林に山菜野草と薪拾いにやってきていた。
俺は背負子を背負い、他の人間は山菜野草を拾うためのカゴを持っている。
流石に下の双子は手ぶらだが。
今までは赤ん坊だったのでほぼずっと家の中だった、下の双子が雑木林に入って目を輝かせてる。
「みどー、きえー」
「みどー、きえー」
双子が同時に緑色をした草花を指差して、振り返った様子を見た俺は笑った。
「うん、緑は綺麗だよね」
上の娘は下の娘たちの様子を懐かしげに見てる。
「転ばないように気をつけてね?」
息子はハラハラしながら見てるな。
下の双子にとっては何もかもが初めて見る景色だからだろう、”きえー””すごー”を連発してる双子。
もう少し大きくなったら、お互いに意識して違う行動を取るようになるのかもしれないが、今はほぼ同じ行動を二人で取り続けてるのは見ていて面白い。
この時代では2歳過ぎまでくらいは母乳をやって育てるので、山菜野草の新芽やたけのこなどが食べるものと言う認識はまだないとは思うけどな。
息子の心配を他所にはしゃいでる双子だが、一人がずでっと転んでしまった。
どうやら、木の根っこに足をつまずかせたようだな。
”うあーん”
一人が泣き出すともうひとりも泣き出した。
”うあーん”
泣き出した子供をイアンパヌと乳母さんが抱え上げて、イアンパヌは子供に怪我がないか確かめている。
「大丈夫か」
俺はイアンパヌに聞いたが、イアンパヌはコクリと頷いた。
「大丈夫、怪我はないみたいだから。
ほら、いたいのいたいのとんでいけー」
地面に手とかをぶつけていたいだけなら良かったな。
たかが擦り傷と侮れない時代だ。
”あーん、あーん、あー”
イアンパヌたちに揺すられたり、頭を撫でられたりしながら、次第に泣き疲れて双子は眠っちまった。
まあ、小さい子供ってそういうもんだよな。
俺は上の娘と息子に指示を出す。
「じゃあ俺達で食えるもんを集めるぞ」
「はい、お父さん」
「わかりました」
上二人はなんだかんだでしっかりしてきた。
下に子供ができるとそんなふうになるらしい。
息子は娘に教えられながら、竹籠に山菜野草を集めていく。
春は生命力にあふれているいい季節だ。
俺は落ちて乾いてそうな枯れ枝を背負子へ載せていく、寒さは過ぎて昼は家の外のほうが温かいこともあるが、夜はそれなりに冷えるからな。
燃やせるものが基本はこういった拾った柴だけのこの時代ではこういうことは地味に重要だぜ。
家族揃ってのんびり新緑の雑木林を歩くと、草木の香りで心も澄み渡る気がするな。
すやすやと抱えられて寝てる子供は可愛いが、赤ん坊をを抱えて歩く二人は大変そうだ。
だが、家の中でじっとしてるよりは気分転換にもいいだろう。
俺達が必要なものをしばらく拾い続けて、何時間かすれば背負子もカゴもいっぱいになった。
「さて、そろそろ帰るか」
「そうね、暗くならないうちに帰りましょう。
アク抜きも大変だし」
「はい、お父さん」
「はい、お父さん」
「では、帰りましょう」
こうして俺達は雑木林から集落へ戻ってきた。
ツクシやゼンマイやらワラビやらがたくさんとれたが、木灰を溶かした水で軽く茹でて灰汁を抜かないといけない。
こうした作業はそれなりに時間もかかるし、日が暮れた後だと大変だから、それなりに量が取れたら無理して取ることはない。
春は貝もたくさん取れるしな。
昼過ぎにはアク抜きを始めたので、日が暮れる頃には食えるようになるだろう。
今夜は山菜汁だな。
泣き疲れていた双子が起きてきて、アクをとるために水につけてるゼンマイをしげしげと見ていた。
「危ないから、あんまり近づくなよ」
「あぶあい?」
「あぶあい?」
意味がよくわからないと首を傾げる仕草もかわいい。
小さい子供は天使だよな。
「とーしゃ、だっちょー」
「とーしゃ、だっちょー」
二人していっぺんに抱きついてくる双子を俺は抱きかかえた。
「おう、抱っこだな。
ほれほれ」
「あははははは」
「あははははは」
抱っこされると嬉しそうに笑う双子。
まあ、人に抱かれると安心なんだろう、危ないって言葉に反応したのかね。
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