春になったからみんなで海に出かけよう
さて、暖かい春風が吹く季節になると、海辺で貝がたくさん取れるようになる。
縄文と言えば貝塚というイメージも在るが、実際春から夏にかけては砂浜で取れる貝類は大事な食料だ。
ただ貝は効率の良い食べ物ではない。
全体の重さに比べると貝殻の重量が大きいので、集落に運んで行っても貝殻を捨てないといけない分損では在るんだが、冬の獣や夏の魚などと比べても、見つけて取るのが簡単なのはありがたい。
さてさて、俺達はいつものメンバーで海にやってきた。
そして下の双子は海と空の青に感動している様子だ。
「あおー」
「あおー」
目を見開いて輝かせその後、海をゆびさして俺に向かって嬉しそうに言う。
「すごー」
「すごー」
双子が海に向かって走ろうとして、砂に足を取られて転ぶ。
「?」
「?」
柔らかい砂だからか痛くないのだろうけど、顔を砂だらけにしている互いを見てケラケラ笑ってる。
「おーい大丈夫かー」
「あーい」
「あーい」
双子は砂浜に座ったまま手を振ってきた。
「うーん、私もあんな感じだったりしたんでしょうね」
上の娘が双子を見ながら懐かしそうに言う。
「そうだな、お前さんも水がいっぱいーっていって、水に足をつけてちべたーっていってたな。
可愛かったぞ。」
「むむ、そんな感じだったんですか」
照れ笑いを浮かべる上の娘。
「よし、んじゃみんなで貝を探そうか」
イアンパヌや上の娘、息子はこくと頷く。
「かいー?」
「かいー?」
下の双子は首をひねってる。
「お前さんたちはまだ食べられないが、俺達が食べる貝はな、この砂の中に潜ってるんだ」
俺は砂を指し示した。
「なかー?」
「なかー?」
そう言いながら首をひねる双子。
まあ、まだまだ小さいし意味はわからんか。
「まあ、まだお前さんたちには早いし、砂いじりしたり、歩いたりして遊ぼうか」
双子は両手を上げて喜ぶ。
「あいー」
「あいー」
俺は双子と一緒に砂を丸めて砂団子にしたり、砂で子供から見れば高い山を作ってトンネルを作ったりした。
「たかいー」
「たかいー」
「おいこら登るな、壊れる」
双子は砂の山に登ろうとして山を踏み潰してしまった。
踏み潰してひっくり返って、壊れた山を見て泣き出す双子。
「うあ……あーん、あーん」
「うあ……あーん、あーん」
「おうおう、泣くな泣くな」
俺は両腕で片方ずつ抱っこして泣き止むまでまつ。
どんな時代でも泣く子には勝てないってな。
その間に他の家族たちはワイワイ喋りながら、砂を掘って浅蜊を掘り出していた。
「姉さんいたよ、こっちこっち」
「うん、わかったよ」
「こっちもいっぱいいるわよ」
「そうですね」
上の子供達は貝探しにも大分なれてきたみたいだな。
なんだかんだで、春先は食べられるものが多くてありがたい。
貝は出汁も取れて美味いしな。
「おや、寝ちまったか」
泣いてたと思った双子は泣きつかれて寝てしまったようだ。
まあ砂の上に寝かせるわけにもいかないし、とりあえず抱きかかえておこうか。
小さな子供は体温が高くて温かいし、なんだか懐かしいミルクの匂いがする気がする。
そしてムクリと起きあがったと思ったら二人揃っていった。
「しっこー」
「しっこー」
「おうちょっとまて、今ズボンをおろしてやるから」
「しっこー!」
「しっこー!」
小便はもうその場でさせた、出物腫れ物ところ構わずだったか?
なんか間違ってる気もするが大まかには間違ってないと思う。
小さい子供はなかなか、大変だ。
太陽が傾いてきたら、浅蜊もたくさん取れたので、集落にかえる。
一晩海水につけて塩抜きをしたら、翌朝は美味しいあさり汁だ。
「うん、美味い」
「そうですね」
みんなでニコニコして浅蜊の入った汁を飲む。
量的にはそんなに多くないけど何故か腹がふくれるのが不思議なところだ。
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