そろそろ銅で調理器具を作ろうか
さて、野外調理をして思ったんだが、やっぱりそろそろフライパンや鍋を銅で作りたい。
ということで銅を取りに、久しぶりに秩父へ向かおう。
船に帆をつけた分、その前までよりは川などの上り下りも楽になってるしな。
以前作った丸木舟に帆をつけて、アウトリガーをつけた帆走カヌーで行けば、そんなに時間もかからない。
「じゃあ、ちょっと秩父に行ってくるな」
「はい、行ってらっしゃい」
「はい、いってらっしゃおとうさん」
「らっしゃー」
今回も変わらずこちらから持っていくのは、塩と綺麗な貝殻、これ等を手土産にして秩父へ向かう。
それらを背負子や背負いかご、背負袋に入れて、村の男達に同行をお願いして一緒に荒川を上っていくのに協力してもらう。
今回秩父に向かうのは俺を含めて男4人、塩や腕輪などに加工するためのきれいな貝殻、荷物を運ぶための木造の猫車や採掘用の石斧などを船に載せたら早速出発だ。
秩父でも翡翠が取れるし、銅を使っての穴掘りなどの鍬を作ったりは村に広まってるからな。
刃の薄い武器にするには、銅は柔らかすぎて向いていないんで、結局石器とは併用してるが。
さて、船に乗って帆を広げると、南風をうけて東京湾を船はするすると北上していく。
「さて、うまく風が吹いてくれてよかった」
「ああ、このおかげでだいぶ楽になったからな」
船は古入間川に入り帆を斜めにしながら風を受けて進み、俺達は櫂を漕いで方向を細かく調節しつつ、川をあがっていく。
日暮れ前に岸辺に丸木舟を上げて、近くの集落に塩を渡して一泊する。
翌日ずっと西に向かって進んでいた船を、荒川に向けて北に分かれる方へ進めば、やがて秩父に入る。
丸木舟を陸に上げて、もう一泊しそれぞれが背負子などに荷物を載せて山道を登っていく。
土器を抱えていた前に比べればだいぶ楽だな。
ひたすら山道を登っていくと、ようやく洞窟についた。
「よし、ついたか」
鹿庭洞窟の村長に挨拶をする。
「お久しぶりです。
村長また銅や石灰岩、あとあれば翡翠や琥珀を譲っていただきたいのですが」
村長は微笑みながら俺達を歓迎してくれた。
「まあ、たくさんのお塩にきれいな貝ですね。
ありがとうございます。
大丈夫ですよ。
それからこちらでも少しずつ集めておきましたので
どうぞ、見てください」
「其れはありがたい」
そう言うと俺達は倉庫のような竪穴式住居に案内された。
前と同じように倉庫の片隅に小さな銅の鉱石が積み上げられている。
あまり大きなものはないが、まあ大丈夫だろう。
それと一緒に翡翠や琥珀もおいてある。
「いつもありがとうございます」
「いえいえ、今回はこの塩と交換に銅はこれくらいでいかがでしょう?
後貝殻と交換で翡翠と琥珀はこれくらい」
「ああ、其れでいいですよ。
ありがとうございます」
「いえいえ、お互い様ですからね。
ここでは塩は作れませんし」
どうやら今回は俺達が採掘に行かなくても大丈夫そうだ。
その代わりに石灰岩を木の楔で切り出していこう。
石灰は酸を中和したりするのに色々役に立つ。
「ありがとうございました。
またしばらくしたら来ると思いますので
そのときにはまたよろしくお願いします」
「はい、こちらこそ。
銅は集めておくようにしますので
よろしくお願いしますね。」
俺達はネコ車に銅や石灰石を積んで、背負子や背負いかごにもそれらを載せ、秩父の山道を降りて、丸木舟のところまでおりたら後は川を下っていくだけだ。
流れに任せて丸木舟は川を下っていき、東京湾に出たら櫂を漕いで行けば、無事に村に帰ることができた。
そして我が家に帰る。
「おーい、只今帰ったぞ」
家族が笑顔で迎えてくれた、なんだかんだで遠出した後、家族に無事会えるとほっとする。
今回は乳母をやってくれてる女性も一緒だが。
「おかえりなさい、無事でよかったです」
「おかえりなさい。
「おとうさん、おかえりなさい」
「おきゃえりなしゃい」
俺は笑いながら言う
「じゃあ、みんなにおみやげだ」
俺はイアンパヌと、いつも世話になってる乳母役の女性に秩父で取れた琥珀を手渡した。
「あら、ありがとう御座います。
すみませんね」
「まあ、ありがとうね、あなた」
娘と息子には銅の鉱石を手渡す。
「お父さんありがとう」
「ありがとでし」
「作って欲しいものが有ったら言ってくれな」
「わかりました、おとうさん」
「あいでし」
さて、村に戻ってきた俺は銅の溶解加工に加えて鋳型を作っての鋳造に今回は挑戦する。
銅は柔らかいので叩いても割りとかんたんに加工はできるが、鋳型を使えば同じものをたくさん簡単に作れる。
フライパンは3つくらいあればそれに越したことはないからな。
以前にやったように粘土を四角く固めて、焼くことでレンガにし、そのレンガを重ねて周りを覆うことで溶鉱用の炉を作って熱を逃げにくくする。
その中に小さな銅の鉱石をたくさん入れた土器を入れて薪をもやし、ふいごで空気を送ってやる。
そうすれば真っ赤にもえあがる薪が炉を激しく熱する。
しばらく其れを続けていたら、うまく銅が溶けてくれた。
その間に粘土を混ぜた砂で砂型の準備をする。
十分冷えたら土器を割って銅を取り出し、石床と石のハンマーで取って来た銅を叩いて伸ばし、フライパンの形にしていく。
「よし、形を取ってみるか?」
フライパンを下と上になる粘土を混ぜた砂で挟み込んで型を取る。
で、銅を溶かし、鋳型に穴を開け土器の端を厚手の革でミトンのように掴んで砂型の中に流し込む。
「うわちちち、こりゃきついな」
しばらくおいておいて、冷えたら金属が冷えるのを待って砂型から取り出し、砥石で磨いでバリを取る。
「ふむ、いい感じじゃないか」
叩いて作ったフライパンと大体同じものができたと思う。
しかし、火傷の危険もあるし、数が少いのであればわざわざ鋳型で作ることもないかもな……。
「鍋は普通に叩いて作るか」
結局、鍋は2つを叩いて加工した。
銅の調理器具は色々メリットが有る。
熱伝導性に優れ、熱が早く伝わる。
錆びにくい。
比較的手入れが簡単。
銅イオンには殺菌効果がある。
などだ。
これで料理をつくる時に調理法が増えるかもな。
麦が取れたら粉にひいてパスタもどきでも作ってみるかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます