採取は一番最初に覚える遊び兼仕事
さて、暑い夏が終わり秋になった。
今日は家族全員で雑木林に木の実を拾いに来ている。
そして俺は、薪拾いように背負子と芋掘り用に掘り棒を、イアンパヌと娘は背負袋と竹の水筒を持ってきてあとは竹で編んだ籠を持ってきている。
息子はまだ小さいので手ぶらだ。
みんな足をけがしないようにちょっと厚めの革で作ったローマ風に紐で縛り付けるサンダルを、皆履いている。
今はイアンパヌが子どもたちにどんぐりを教えてるところだ。
「ほら、これがどんぐり。
これをみんなで拾うのよ」
こくこううなずく娘。
「どんぐり?ひろうー」
よくわかっていないだろうが真似する息子
「ひろー」
野草と毒草は区別がつきにくいこともあるので、小さい子供には危険なこともあるが、どんぐりを見間違えることはまああんまりないだろう。
「どんぐり、あったー」
娘が嬉しそうにどんぐりを拾い上げている。
「あったー」
そしてそれを息子も真似している。
まあ、とりあえずちゃんと取れてるようだな。
イアンパヌはどんぐりだけでなく、クリやクルミ、栃の実なども拾ってるが、子どもたちはどんぐりだけにさせてるのは、まあわかりやすいからだろう。
「さて、俺は芋を探すとするかね」
芋の蔓や葉が生えてないか、探しているとそのうちに見つかった。
「お、あったあった、お~いお前ら、ちょっとこっちに来てみろ」
まずはトテトテと娘が寄ってくる。
「とーしゃ、なにー?」
その後を追いかけるように息子がやってくる。
「なにー?」
二人を見守りながら最後にイアンパヌがやってきた。
「あら、見つかったの?」
俺はイアンパヌの言葉に頷いて芋のつるを指差した。
「ああ、お前らこれが芋のつるだ。
葉っぱも食べられるが、いもは地面に埋まってる部分だから……」
と俺は堀棒を見せて土を掘り始める。
「こうやって周りを掘って取り出すんだ」
俺は堀棒で芋の周りを慎重に掘っていく、自然薯はかなり長いので無理に抜こうとすると折れてしまうのだ。
「お前たちもやるか?」
「うん、やるー」
「やるー」
「気をつけてほれよ」
この時代には金属製のシャベルやスコップなどというものはないので、木の先を尖らせた堀棒でほっていくしか無いんだが、だいぶ大変だったりする。
銅でのスコップとか作ったほうがいいかな。
「あい」
「あい」
二人で一生懸命掘っていたが、失敗して芋が折れてしまった。
最初はぽかんと折れた芋を見ていた二人だが、徐々に涙目になっていった。
「とーしゃ、ごめんなざい」
「めんしゃー」
俺は二人の頭をなでて
「ああ、泣くな泣くな。
最初は失敗するもんだ、気にしなくていいぞ」
「うう、ごめんしゃ」
「めんしゃ」
俺は半分くらいの長さの芋を二人に見せていった。
「お前たちが取ったどんぐりと芋帰ったらみんなで食べような」
「あい、とーしゃ、みんだでたべゆよ」
「たべゆー」
やれやれ泣き止んでくれてよかったぜ。
ま、芋の残りは埋め直せばまた生えてくんだろ。
俺はイアンパヌに聞いた。
「いっぱい取れたし帰ろうか」
「ええ、そうね」
「あい、かえるでしゅ」
「かえるー」
こうして俺達は村に帰った。
拾ってきた木の実は、選別のために水の入った土器に入れて、水に沈んだものは食べられる。
浮かんできてしまうのは虫に食われて中空になってる可能性が高いからやっぱり捨てる。
「よーしどんぐりの殻を割るぞ」
「あい、わるでしゅ」
「わるー」
石斧を使ってどんぐりの殻を割る。
「じゃあふたりでカラと薄皮をはがしてくれ」
「あい、とーしゃ」
「あい」
二人でどんぐりの殻をちまちま剥がしている、様子を見ながら俺は灰汁を入れた水のはいった土器を用意する。
「からがむけたらこのなかに入れるんだぞ」
「あい、いれるー」
「いれゆー」
子どもたちがどんぐりを入れたらひたすら煮沸して苦味がなくなるまで水を入れ替えて繰り返し繰り返し煮ることで灰汁を完全に抜く。
アクが抜けたら石皿と石棒ですりつぶして粉にする。
粉にしたら今日は無発酵パンであるナンもどきでも作ってみるか。
「よーし、お前たちもう一回手を洗ってくれな」
「あい、あらいましゅ」
「あらいー」
ドングリを挽いて粉にしたものに、お湯と少量の塩をまぜる。
「じゃあお前たちに食べたい大きさにこねてくれ」
「あい、とーしゃ、こねるー」
「こねるー」
「じゃあ、私もやりましょうか」
家族みんなでどんぐり粉を捏ね、丸い円盤状に伸ばしたら炉の近くの石の上に載せ、あとは焼き上がるのを待つだけだ。
焼き上がったらみんなで食べよう。
「よし、じゃあみんなで頂きますだ」
「頂きます」
「いただきましゅ」
「いただしゅ」
みんなでどんぐりのナンもどきパンを食べる。
「ん、うまい」
「ええ、美味しいわね」
「うまーでしゅ」
「うまー」
また、芋も鮭と一緒に煮て食べる。
「んー体が温まるな」
「ええ、美味しいわね」
「あちゅい……ふーふー」
息子にはまだ芋は早いかもしれんからあとはイアンパヌが乳をやってるな。
子どもたちは疲れて早く寝ちまった。
俺たちも早めに寝るとしようか、子供がいると楽しいが疲れるよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます