育児はいつの時代でも大変だ。

 さて一日が過ぎ日が昇った所で、無事に子供が生まれた記念の土版に手形をつけようか。


 ちなみに名前はまだつけない。


 赤ん坊は「テイネシ(ぬれた糞)」「ソン(糞)」「ソンタク(糞のかたまり)」などと呼ばれ、意図的に汚い名前で呼ぶことにより、病魔が近づいて命を持っていくを避けるようにしている。


 また、この時代には姓はなく名だけだ。


 さらに名前は、生後すぐにつけられたわけではなく、数年経って子供の個性があらわれてから命名されたが、名前は親の願いを込めたり、誕生後のその子のエピソードにちなんで付けられることが多かった。


 だが、兄や姉が死亡したりした場合には、病魔がとりつかないよう、わざと汚い名前を付けることもあった。


 この時先祖や親の名前だけでなく、他人と一緒の名前は徹底的に避けた、これは名前によって運命が同じになる事を避けるためだ。


 また名前を知られる事を縄文人は嫌った。


 名を知られるのは運を奪われ不幸を招くことだと考えたので、普通は親しくないものの名前では呼ばずあだ名のようなものを普段は使った。


 この時代は役所などはないので名前などは変えたい時には自由に変えられたけどな。


 ウパシチリやアペフチなどは本名じゃないはずだ。


「あー?」


「よし手形をつけるぞ」


 俺は赤ん坊の小さな手を取って石版に押し付け、同じ様に足型もつけるる。


 うん、うまく手形と足形がついたな、ちっちゃな手足そのままの、可愛いオブジェだ。


 この土版には、ヒモを通す小さな穴を開けて飾っておく。


 さて初産だと、母乳が出るのは赤ちゃん出産後2日から5日くらいからだが、その間ずっと授乳ができないというのは赤ん坊にとってやばいので、出産後は、母乳が出ない状態でも赤ちゃんにおっぱいを吸わせて、母乳を噴出するホルモンの働きを促すことはするが、とりあえずはすでに子供を産んでいるが子供が死んでしまったなどで子供はいないが母乳は出る女性に乳を飲ませてもらう。


 この時代における子育ては集落での共同作業で、みんなで面倒を見ているわけだ。


 この時代は2歳から3歳ぐらいまではずっと母乳で育てるから、その間は生理も基本来ない。


「よしよし、いい子ね。

 いっぱい吸っていっぱい寝て大きくなってね」


 新生児はいきなり起きての夜泣きなどをするので複数の女性が面倒を見ないと参っちまうしな。


 この時代にはおむつなどない、それどころか一般の平民にとっては大人になっても衣服すら足りていない時代は戦国時代が終わるまで続いていたから、乳幼児の排泄物処理に布きれをつかうようになったのは、江戸時代からで、それまでは特になにも付けたりはしていない。


 しかしオムツなしの育児と言うのはむしろい人類の歴史から見ればそちらのほうが長く、赤ちゃんでも様子をよく見ていれば大小便をしたい状態というのはわかるから、生後まもない赤ちゃんでも、 大人が手伝ってあげればなんとかなるものだ。


 授乳や排便などの、赤ちゃんの欲求にきちんと応えながら育てると、赤ちゃんは泣く理由がないのでほとんど泣かない。


 むしろおむつをつけないほうが気持ち悪いこともなく毎回すっきりと出しきるので、体に良いし、欲求を理解してもらえるので、情緒も安定する。


 育児に時間をかけられるならむしろおむつはないほうがいいのだな。


 こうすればおねしょなどもしないようになるし、授乳や排せつに気をつければ、赤ちゃんの体調が敏感に感じられるしな。


 まあ、どんな時代でも子育てというのは大変ってことさ。


 一方抱っこひもができたおかげで、抱っこし続けたりするのは前よりは楽になったとは思うけどな。


「んじゃ、食べるものを取ってくるな」


「はい、行ってらっしゃい、気を付けてね」


「ああ、わかってるさ」


 縄文時代は食料が足らなくてなかなか人口が増えなかったと思われてるが其れは誤解だ。


 正確には戦争や競争によるより多くの人口の確保というものを必要としないのんびりとした時代だから無理に人口を増やそうとする必要はなかったんだ。


 むろん、乳児や幼児の死亡率の高い時代だから人口が増えなかったというのも在る。


 女性が生涯に生む子供の人数は平均して5人位。


 半分が成人できないとすると、まあそうそう数は増えないわな。


 でもまあ、人口が保持できれば特に問題はないと思うがね。

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