石鹸を作ろう

 さてさて、この縄文時代には石鹸はない


 洗濯に使える石鹸の代わりとなるものはいくつか在るけどな。


 とは言え手洗いなどに使える石鹸もやっぱりほしいから作るとしよう。


 石鹸は動物もしくは植物の油とアルカリを混ぜて作る。


 鉱物油ではできないがまあ関東では鉱物油は手に入らないからこの際は関係ないか。


 石鹸を作るのに必要なアルカリはエジプトや中近東のように天然ソーダがある場所では天然ソーダを使って石鹸にできるが、日本には天然ソーダはないので灰を水に溶かし上澄みを集めた灰汁を使うことになる。


 この際に木灰だと主成分が炭酸カリウムであるため石鹸は液状になってしまうので、今回は海藻を燃やして炭酸ナトリウムを主成分として灰汁を作ることにする。


「その前に木枠とかを作らんとな」


 石鹸を固めるときに使う木枠の型を削って作り、鯨油を精製する時に使う竹筒も用意して、その間に海藻を多量に燃やして灰にし、その灰を土器に入れて水を加え、それを布でこして上澄みにしてアルカリ性の灰汁を作る。


「海の近くだとこういう時助かるぜ。

 よしよし、こんなもんかな」


 冷暗所で保存しておいたクジラの皮下脂肪をナイフで適当な大きさにカットし、土器に少々水を加えて、鍋を火にかけ溶かしていく。


「うーむ、まあやっぱりそれなりに臭うな」


 クジラの皮下脂肪を溶かしたら、それに刻んだよもぎを加えて木の棒でかき混ぜながらよく煮る。


「ふむ、結構匂いは消えたかね」


 十分に加熱できたところで土器を火からおろし、麻布で入れたよもぎやそれに絡まった夾雑物を濾して融けた脂を竹筒に入れる。


「さて、冷やして固めるかね」


 竹筒を土に埋めて冷やし、十分に冷えた所で竹筒を割って脂を取り出し下の方にできている、茶褐色のコラーゲンや血液で出来た煮こごり要するにタンパク質を捨てる。


 ニオイのもとになるものはこれでおよそなくなって居るはずだ。


「ふむ、こんなものかね?」


 固まった脂をふたたび土器にいれて融かし、海藻を焼いて作った灰汁をゆっくり溶かした脂に流し込み、均一になるように全体が白濁するまでかき混ぜる。


 そして塩水を入れて液体のグリセリンを分離させ、個体の石鹸の部分を固化しやすいようにする。

 全体が白濁しカスタードクリームのようにとろとろになった状態になったら石鹸の成形用の型に注ぎ込み粗熱が取れた頃を見計らって型の上に木で蓋をし埃が入らないようにする。


 あとは型に入れたまま1週間ほど放置し乾燥させ、一度ひっくり返してもう1週間ほど乾燥させれば石鹸の完成だ。


 型から出来上がった石鹸を外し眺める。


「よし白くて変な匂いもしないな。」


 これでできた石鹸はいろいろなことに使えるはずだ。


 出産時に立ち会う人間には石鹸で手洗いをしてもらおうかね。


 その時使うタオルやバスタオルも石鹸と洗濯板で洗えば感染症にかかる可能性は減るだろう。

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