育児に役立ちそうなものを考えよう
さて、イアンパヌのお腹は順調に大きくなっている。
「ああ、水汲みとかいいから、全部俺に任せとけ」
「そう?じゃあ言葉に甘えちゃうわね」
もし水くみのせいでイアンパヌが水に落ちたり流産とかしたら困るからな。
重い水入りの土器を抱えての川と村の往復が増えるのは大変だが、母体と子供の安全のほうが大事だ。
「んー、運ぶのに楽になるものがあればな……。
そうか、孔明が作った木牛流馬みたいなものがあれば楽になるかもな」
木牛流馬の詳細は不明だが木牛が現代におけるネコ車のような一輪車。
流馬はソリだと言われている、これ等を使って孔明は山奥の蜀の領地での輸送を楽にしたと言われている。
箱の下にソリをつけたものならかんたんかもしれないな。
造り方は背負子の応用でまず木の棒4本を組み合わせて紐で固く縛ったものを板に見立てて、それを底になるものと壁になるものを組み合わせて紐でさらに縛れば箱になる。
その底に竹を平たくして先を炙って曲げればソリのかたちになるので、其れも紐で縛って底に固定すれば、完成だ、
大きさは土器を4ツ入れたらちょうどいっぱいになるぐらいにした。
試しにそりを引っ張ってみる
「ぬおお、結構重いな」
うむむ、紐で縛るんじゃなく接着剤がほしいところだ。
しかしこの時代にはボンドどころか
アスファルトは新潟か秋田のあたりに行けば在るが関東にはない。
「となるとこの時代でも作れそうなのは
膠は動物の皮や骨などのコラーゲンから作られる接着剤で、洋の東西を問わず、昔から木工などに用いられた。
ゼリーを作るためのゼラチンと同じもので、主に食品や医薬品などに使われる純度の高いものをゼラチン、日本画の画材および工芸品や楽器などの接着剤として利用する精製度の低いものを膠という。
動物の皮や骨等を強いアルカリの灰汁や石灰水に浸け、毛などの不要なものを取り除き、煮つめて濃縮させ、乾燥と精製を重ねて固めれば出来上がりだ。
膠の成分は主にゼラチンで要するに煮こごりを固まるまで煮つめたものと考えてもいい。
「ちょうどクジラの皮があるし、クジラの皮で作るかね。
クジラの革なら毛を取り除く手間も省けるし」
俺は以前捕獲してとっておいたクジラの皮をはぎとって、其れを土器でひたすら煮詰める作業を繰り返して膠を作り出した。
「こんなもんかね。
うまくすれば竹の合成弓も作れるかもな」
合成弓というのは素材を貼り合わせて作るもので、単一の素材のものより強度を上げることができる。
「その前にまずはソリだな」
ソリの木材を角材にしてそれぞれを膠で接着し、箱型の入れる場所を作り、ソリとなる部分を膠で接着した。
「うし、これで紐で縛った部分が突っかかることはなくなるな」
大きさは変わらないが運ぶのがだいぶ楽になったぞ。
流馬つまりソリができたなら、木牛こと一輪車も作りたい。
「しかし、車輪と車軸を作るのは大変なんだよな……」
ソリであればまっすぐな板があれば何とかなるが、車輪と車軸は真円でないといけないからな。
とりあえず木の板に中央側を固定した紐に炭をくくりつけて円を描き其れにそって銅の斧で削ってまず木の円盤の車輪を作る。
そしてその真ん中にこれまた木の枝を削った車軸を入れてとりあえず車輪は完成だ。
まあ其れとは別に角材を使って、押してすすめるように持つための取っ手をつけ、取っ手の間に竹籠をくくりつければ完成だ。
「うし、これで荷運びが楽になるかな?」
まあ、水を運ぶのはソリのほうが安定していていいかもしれないけどな。
森から芝を運んでくるときは背負子を使うよりもこっちのほうが楽かもしれない。
あとは、赤ちゃんを抱っこする時に補助する、抱っこひものようなやつだな。
子供の大きさによってある程度使い分けが必要らしいが、そこまでは無理だからとりあえずある程度幅の広い
麻布を編むのはアンギンという石をつけて垂らした縦糸に横糸を折り返して入れていくわけだがこれが手間がかかるんだな。
とは言え編み機やら織り機を作れる気はしないから黙々と糸を編んである程度の長さの布を作り上げるしか無いが。
「さてどんなもんかな?」
抱っこひもの原理は三角巾での骨折固定と同じで肩に結んだ紐を通してお腹側に紐と言うか帯状の布を垂らし、そこに赤ん坊を載せるというものだ。
これがないと母親なり父親なりは腕のチカラだけで抱きかかえないといけないが、これがあれば紐が補助してくれるので楽になるはず。
残念ながらそこまで詳しい育児の方法は知らないんだよな俺。
「ま、なんとかなるだろ」
ま、案ずるよりも産むが易しというしな。
少々不安もあるが多分なんとかなるだろう。
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