土器を焼こう・焼き方は弥生式でな
さて、縄文時代といえば土器だ。
土器が開発された事で、食べられるものが増えたし、水を入れてももれないし腐らないと、土器が開発されることで生活がとても便利になった。
竹を編んだ籠や動物の皮の袋、麻の袋などは其れは其れで便利では在るんだがな、軽いし。
ただ、縄文式土器には欠点も在る、野火で焼くためにもろくて壊れやすく、そのために粘土を厚くせざるをえないので重い。
俺とイアンパヌは朝の水くみをしながら話していた。
「うーん、もうちょっと丈夫で軽い土器がほしいよな」
イアンパヌもウンウンと頷く。
「そうね、そうすれば水をくんでくるのも楽になるのだけどね」
粘土を焼いて器を作るということ自体は現代でもやっていたから、大きな違いは素材と焼成の方法なわけだがな……。
久しぶりにサバイバル読本を読み返してみるか……ふむふむ、縄文式と弥生式土器の違いは焼き方にあるのか。
さて、そうなるとまずは粘土の入手だ。
粘土自体は関東ロームの上に黒ボク土が折り重なっていて、黒ボク土自体は土器の素材にできないが、その下には粘土(ローム)がたくさんある。
其れを取り出すには出てくるまで掘り進めるか、崖などで粘土が露出している場所を探すか湿地帯などに溜まってる物を使うかだが、この寒い冬に湿地帯にいくのは気が進まないし、掘り下げるのは大変すぎる、というわけで粘土層が露出している崖まで取りにいいくことにする。
無論その場所を知ってるのは今まで土器を作っていたイアンパヌなので彼女と一緒にいくわけだ。
取った粘土を入れるための土器と崖から粘土を掘り取るための竹を斜めに切った物をもって俺たちは底へ向かった。
その崖は多分大昔に地震か何かあった時にできたんだろうな、土器づくりのために粘土があちこち削り取られているのを見ればだいぶ昔からここに粘土を取りに来ていたのだろう。
「さ、始めましょう」
「ああ、了解だ」
俺達は土器に崖を掘って取った粘土を詰めて、土器いっぱいになったら其れを集落へ持ち帰った。
「じゃあ、始めましょう」
「おう」
採集した粘土は,そのままでは焼いて土器にすることができないので、粘土に砂を2割、『シャモット』を1割、植物繊維を1割の割合で混ぜ合わせてみまた。
砂や食物繊維を入れる目的は粘土のつなぎをよくするためらしい。
混ぜ合わせてよくこねた後、日陰や気温の低い場所に置き2~3日寝かせる、この作業を行うことで、土全体にねばりがでて粘土の粒子が均一になり、火の通りも均一になるわけだ。
ちなみに焼き物を焼くときは焼く前にしっかりと乾かすことが必要だ。
しかし、いくらよく乾かしても粘土の粒子の間にどうしても水分は残る、また結晶水といって粘土の鉱物中にも水分があるのでこうした水分が加熱時に出てきてしまう。
このため、急に加熱すると器の粘土の中で水分が大きくふくれ、爆発してしまう。
其れを防ぐために今回はさらに『シャモット』という一度焼いた粘土を砕いて粉にしたものも混ぜるわけだ。
これを入れることに水分の入っていない粘土が増えて比較的急な加熱や冷却にも耐えられるようになるらしい。
ただし沢山いれると今度は固くなって加工がしにくくなるのでこちらは1割程度入れて様子を見ることにする。
シャモットにするのは壊れてしまった土器でこれを石斧でさらに細かく砕いた後石皿と石棒で粉にしたものだ。
さて、粘土の準備ができたら土器の形を作る。
土器を作り上げるための台になる石の上に、土器をろくろのように手で回転しやすくするため木の葉を敷いてその上に、こねた粘土を団子にして粘土のダンゴを手のひらで叩きつぶしてまず土器の底を作る。
よく叩き潰さないと空気が残って割れてしまうが薄くしすぎると底が抜けてしまうから適当に厚みを持たせてな。
「あ、イアンパヌ、今回はいつもより薄めに作ってくれ」
「え、いいけど割れちゃうんじゃないかしら?」
「うーん、多分大丈夫だと思う」
「そう、じゃあそうしてみるわね」
そして粘土のかたまりから同じ太さのひもをたくさんつくる、紐状に伸ばすのは粘土の中の空気を可能な限り抜くためだ。
この時同じ太さでないと、土器の厚さがばらばらになって、火の通りが均一でなくなることでこわれたり、割れやすくなるので可能な限り太さは均一にする。
その粘土紐を輪にして一本ずつていねいにつみ上げ、つみ上げた粘土のひもを指でギュッと摘んでお互いがはなれないようにくっつけていく。
こうして粘土の帯を輪にして積み上げる「輪積み技法」と粘土のひもをらせん状に巻き上げる「巻き上げ技法」があるが、輪積み技法のほうが最初はうまくいきやすいらしい。
で、手のひらで挟んで表面を平にしていけば土器の形になっていく。
土器の形が完成したら最後に口べりの高さを整えて大まかな形は完成だ。
この時に必要以上に厚くなっている部分を木片を使って粘土を削り落とし厚みを均一にする。
その後は自分の好きなように土器に文様をつける。
麻の縄をころがすことでできる縄目を付けたものが縄文で、貝殻を使った貝殻文、ヘラや竹串などで付けた沈線文なども在る。
文様にはどんな意味があるかだって?
デザイン的に見栄えが良くなるようにって言うものでそこまで深い意味はないよ。
そして、内面をヘラや石でこすってなめらかにして水漏れが起こらないようにする。
こすってみて表面に少しつやがでるようであればOKらしい。
形ができたら陰干しでゆっくりゆっくり乾燥させる、冬ならおおよそ一月ぐらい。
夏でも2週間は必要。
この時水が抜けて土器が結構縮む。
急な乾燥はひび割れのもとなので直射日光に当てたり炉の熱に当てたりはしない。
十分に乾燥したら焼成に入る。
この時縄文式だと薪を燃やして、その脇に土器をおいて、マキの周りに土器を置きゆっくりまわしながらあぶることで少しずつ加熱していき、土器を中央に集めてに薪を立てかけ燃やした後、土器を倒して底を焼くのだが今回はちょっと違うやり方をしてみる。
先ずは土器を地面において、その上に適当な長さに切りそろえた萱を積む。
「ねえ、何やってるの?」
「ん、一種の蒸し焼きにしようとしてるんだよ」
「蒸し焼き?」
「ああ、木炭を作るのと考えは同じだよ」
「あ、なるほど」
さらに、その上に灰や土を軽く掛けて火をつけると煙がもうもうと湧き上がる。
上にかぶせた灰や土のせいで一気に火が広がらずにじわじわと萱が焼けていき、灰や土のせいで熱が逃げずに効率良く土器が焼けるというわけだ、こういった焼きかたは覆い焼きというらしい。
とりあえずその後は自然に冷めるのを待って取り出す。
「ん、うまく行ったかな?」
「うん、今までより固くて丈夫そうね」
どうやらうまく行ったようでよかった。
土器の厚さが薄くなり、その分軽くなってしかも割れにくくなるのだから言うことなしだな。
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