この時代食料を得るのは割りと簡単だけど家事は結構大変だ
さて、箱根で黒曜石を手に入れて無事戻ってきて、ふたたび普通の日常に戻った。
この時代、四季を通してそれなりに食べるものを得られるから食料を得るのは難しくないのだが、そのかわり日常の家事は便利な電化製品などがないのでけっこう大変だったりする。
普通に晴れた日はまず朝起きたら川に土器を持っていく。
川の水で口をゆすいだり顔を洗ったりしたら、土器に水を汲んで村に戻る。
そして今度は別の土器を持って海に向かい、海水を汲んで村にまた戻る。
温かいときはいいが寒いときはこれは辛い。
雨が降ってるときは外に土器を出しておいてたまった雨水を飲む。
傘もレインコートもない時代で雨にうたれて外にずっといるのは非常に危険だからなるべく外には出ない。
しかし、縄文時代の集落は川の洪水や海の津波を警戒して丘の上に作られているのでそこを水や海水の入った重い土器をもって行き来するのは結構辛い。
まあ、現代でも水道のない地域なんかは同じことをしているわけだがな。
ちなみに食事は”腹が減ったなと思ったら食べる”だ。
一日に二食というのは、農作業のようなきつい労働を毎日しないといけない農耕民族では仕方ないのだが、そこまで重労働道を必要としない縄文人は基本腹が減ったなと思ったら食べものを取ってきて食べるスタイルだからな……でかいイノシシなんかが手に入れば、みんなで分けても何日か分はなるから、毎日毎日狩りに精を出していたわけでもないってわけだ。
食べ物を作るために必要な労働のために食べ物をたくさん食べないといけないというのは実に効率が悪いんだよ、穀物中心だと膵臓に負担も大きいから生活習慣病にもなりやすいし縄文人の貝や魚や獣肉が中心の生活は案外身体への負担は少なかったりする。
縄文時代というと寿命が随分短かったと思われているが、狩猟採取時代の寿命は約40年で、農耕民族の20年より長い。
また平均寿命はともかく成人すれば70くらいまでの長く生きられる人間は結構居た。
狩猟採集民の生活水準は、実は産業革命以前の大半の農民の生活水準例えば日本では幕末までの農民などよりずっといいんだ。
まあ、乳幼児のうちは身体が小さく体温の保温が難しいから、15才までに半分以上は死んでしまう。
やや近代化した現代の狩猟採集民でも15才までに三割が死ぬくらいだ。
子どもの死亡率が高い理由はシンプルで、身体が小さいから体温の保温が難しい上に、感染症への抵抗力がないからだな、先祖は南の島から来てるから関東ぐらいまではマラリアも多い、熱を出したら肺炎や気管支炎にもなる。
この時代にはインドとの接触はないから天然痘やペスト、コレラなどのインドの風土病はないがな。
高熱が出ると薬などはないからどうしても体力のない子どもは死にやすい。
その代わりに狩猟採集民たちは健康寿命が長い、アルツハイマーも糖尿も高血圧もガンもないから、ピンピンしてたやつが肺炎でいきなり死んだりする。
そんな感じなので体力や抵抗力がつく15歳をすぎれば、縄文人は案外長く生きられたんだ。
なんせこの時代は暖かく、食料にそれほど困らず、タンパク質やビタミン、ファイトケミカルの多い食事をしてるんだから、穀物ばかりで栄養が偏りがちな農耕民族より身体が丈夫なわけだ。
まあそれでも病気例えばマラリアにかかったら、死ぬ場合もあるし、骨折、捻挫や脱臼などをした場合は大変なわけだがな。
まあ、医療技術なんて無い原始時代だからどうしょうもないが。
さて家事というと炊事、洗濯、掃除、育児というところだが、炊事はまあ焼く、煮る、蒸し焼きにするくらいしか無い、味付けも海水などを使った塩を使うのがほとんどだ。
縄文人は縄文暦と呼ばれる四季を区別する原始的な暦を一応持っていて四季によって食べるものを食べ分けている。
その他としては海藻を焼いた灰である藻塩灰、山椒、山葵、魚の発酵塩漬けの魚醤、草の発酵塩漬けの草醤、ドングリなどの発酵塩漬けの穀醤なども一応在るが、無理して味付けをする程でもない。
この時代食事は味を楽しむのは二の次で生きていくために最低限食べるものなので娯楽的な要素では基本はないのだ、もちろん例外も有って其れは祭の時に振る舞われる料理な訳だがな。
洗濯だがこの時代には全自動洗濯機はない、それどころか洗い桶や洗濯板もない、合成洗剤や石鹸もない。
だから基本は衣服を川に持って行って水につけて手でもんだり麻の丈夫なものなら石に衣服を叩きつけたりするだけだ。
汚れや臭いが酷い場合は洗剤はないので瓶に水を満たして灰を入れその上澄みの灰汁(あく)や小便を衣服につけて其れをもみほぐして洗うことで油を落としたりした。
木灰・ワラ灰・海藻灰、尿などのアルカリは脂を乳化したりタンパク質を分解する性質を持っているからな、調理器具である土器を洗うときも同じように灰汁を使ったり水を入れて煮ることで油を溶かしてきれいにするぜ。
服に小便をかけるなんて汚いと思うかもしれないが、むしろ小便をかけてちゃんと水洗いしたほうがたほうがきれいになるんだよ、不思議かもしれないけどな。
ちなみにこの時代には家の中に便所はない、どこでするかというと、集落から外れた”ゴミ捨て場”の決められた場所に穴をほって大便をしてあとで埋め戻した。
小便は同じ場所で適当にした。
貝殻や海老や蟹などの空、壊れて使えなくなった石器や土器も同じ場所に埋めた。
これが後に貝塚になったりするわけだ。
埋めるのは蝿がたかるのを防ぐためだな。
掃除だがこの時代には当然ロボット掃除機も掃除機もないし箒やちりとりもない、布を作るのは大変なので雑巾もない、家具もない。
なので、拭き掃除や掃き掃除はないが床に物が落ちてない状態に拾い上げてきれいにしておくことはした、中世の都市のように家の外に汚物や生ゴミを投げ捨てるようなことはしなかったんだ。
以外に思うかもしれないが埃は火を常に炊き続けることで換気をしているため意外とたまらない。
まあ、そのせいで煤がつくからけむっぽくは在るんだが。
ちなみにこの時代は風呂もないから暖かい時期は川で水浴びをしたが、冬はまあ寒くて洗濯も滞るし、水浴びもできないから、体臭がきつくなったりはするのは仕方ないので諦めたよ。
常に煙で燻されてる家に住んでるからそこまでは気にならなかったけどな。
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