米は日本人に欠かせないけどこの時代にはまだ無いですよね…え?あるの?

 さて1万7千年ほど前に極大氷河期が終わり、地球が暖かくなると、スンダランド、ペルシャ湾、黄海地域などは海の下に沈み人々はそこから他の場所へ移動していった。


 温かいうちは狩猟採取で生活できたが12800年前頃に起こった小惑星の衝突により起こったヤンガードリアス期は12,800~11,500年前の寒冷で乾燥した時期のことだが、影響が大きかったのは北アメリカ大陸とヨーロッパで、北アメリカではスミロドンなどが絶滅している。


 この期間にはスカンディナビア半島の森林が氷河で覆い尽くされたらしいな、フィヨルドなんかはその時に作られた氷河の名残だ。


 この乾燥した気候による旱魃による食料の減少が、食料を確保するため日本以外の他の地域、特に西アジアの麦や東アジアの稲作、北アメリカではとうもろこしの農耕を開始させたらしい。


 ところが日本では農業は発達しなかった、これは暖流の影響もあって、栗、ドングリ、栃の実などの堅果や魚介類を十分得られたことと、平野の少なさによるものだ。


 因みに農業を行わない狩猟採集民が食物確保に費やす時間は、成人の労働者一人当たり一日平均1時間から4時間あればいい、しかし、農業を始めるとそうはいかなくなる。


 ヤンガードリアスの影響をあまり受けなかったアフリカではその後も狩猟採集の生活が長く続いたのもそのせいだな。


 しかしヨーロッパから東アジアまでは温暖期に人口を増加させた狩猟採取により食糧確保を、突然の寒冷化により維持できなくなった、要するに寒冷化による食料資源の減少が、長時間の重労働が必要な麦や稲、とうもろこしを作る農業を必要としたわけだ。


 なので、縄文時代には農作物は色々渡来していたが、それは主な食料ではなく手が開いてる時にちょっと林を焼いて植えておくかというレベルのものだ。


 最もクリ、トチ、クルミ、ドングリなどを挿し木で増やしたりするのは最優先でやってるがな。


 一年生の穀物や芋よりこれ等の堅果類は取れなくなる可能性が少ないし、家や船を作ったり、住居で燃やす薪にしたりするために積極的に植林している。


 その他としては原始的な焼き畑をおこなって、陸稲りくとう大麦おおむぎ小麦こむぎひえあわきび蕎麦そばと言った穀物、瓢箪ひょうたんや、荏胡麻えごま胡麻ごま大豆だいず小豆あずき緑豆りょくとう、と言った豆や胡麻類、牛蒡ごぼうかぶと言った根菜、里芋さといも長芋ながいもと言ったイモ類、たけのこや、芥子菜からしな菜種なたね漬菜つけな紫蘇しそなどの葉野菜なども適当に植えて、放ったらかしにしつつ実がついたら収穫するということもしてはいる、イノシシや鹿の子供をうまく生きたまま捕らえられたら柵を作って其の中で肥育するということもしているな。


 春は食べられる野草としてワラビ、ゼンマイ、フキ、クズ、ノビル、ウド、セリ、ミツバなども食べるし、秋は椎茸などの茸も食べるぜ。


 瓢箪や胡麻はアフリカ原産だがアフリカを出た人間が延々と栽培してきたのかもしれない。


 ある意味すげーよな。


 こういった縄文の半栽培と半家畜ではあるが、あくまでもこれは予備の食料手段の確保の手段であって縄文人の食料源の多くは暖かい時期は海や川から寒い冬は森から得ているのだ。


 驚いたのは陸稲とは言え稲や小麦、大麦なども有ったことだが芋や麻は何かはもっともっと昔にもちこまれていたらしいことを考えれば驚くほどのことでもないのかもしれないな。


 まあ、そうやって縄文人たちは年間600時間労働位で緩やかに暮らしてるわけだから、そりゃ装飾品や土器、衣装の装飾にも手が回るわな。


「じゃあ、せっかくだし、米でも炊いてみるか」


 イアンパヌが不思議そうに聞いた。


「米?」


「ああ、畑に植えられてるやつのひとつだよ。

 俺が居たところでは一番食べられてたんだぜ」


「そうなんだ」


「ちょっと取ってくるな」


「行ってらっしゃい」


 さて俺は俺がこの時代にきた時に一緒に何故か来てしまったアパートまで戻ってきた。


 鍵を開けて扉を開けて、押し入れの中に入れてあった白米の袋5キロの袋、玄米の2キロの袋に、麦飯の袋と雑穀米の袋も取り出した。


 開けてしまったらさっさと食わないと腐るか虫が湧くからな。


 ついでに土鍋やしゃもじや計量カップも持っていこう


 さて、家に戻ってきたら、米などは大きい土器に全部ぶち込んで混ぜ合わせた。


 其れを土鍋にカップで2杯分いれて、水を手のひらを押し付けて手のひらがぎりぎり沈むくらいに入れたら、炉の火にかける。


 炊きあがりに関しては、臭いと音でだいたい分かるが30分位のはずだ。


 米が炊き上がりほんのちょっと焦げた臭いが混じった所で革の手袋で土鍋を火から持ち上げて火からおろした。


「うん、いい匂いだ」


「そうね、いい匂いだわ」


 しゃもじで石皿に炊き上がった米を載せて渡した。


「じゃあ、たべてくれ」


「ええ、じゃあいただくわね」


 イアンパヌが手で掴んで米をクチに運んでもぐもぐと咀嚼する。


「美味しい!」


 ん、ああ、米や麦がその他の雑穀よりも主食として生き残ったのはこれ等にアミノ酸、つまり旨味成分が含まれえてるからだったりする。


 粟、稗、黍、蕎麦などは旨味は殆ど無い。


 なので作るのが色々大変なのに日本などでは米はずっと長いこと主食とされたんだな。


「お母さんや兄弟にも食べさせてあげたいのだけど……」


「じゃあ、ちょっと一緒に煮て食べられるものを取ってくるよ」


「うん、頑張ってね」


「あいよ」


 さて俺は海岸にいってアサリやエビを捕まえて戻ってきた。


 後網を使って鴨も捕らえ、さばいた。


 そのついでにフライパンと菜箸、ごま油も取ってきた。


「じゃ~ん、いっぱい取ってきたぞ」


 俺たちの住居の中にはイアンパヌの家族が来ていた。


 イアンパヌの母が声をかけてきた。


「美味しいものを食べさせてくれるんだって?

 期待してるよ」


「ああ、任せてください」


 まずは先程と同じようにコメを炊く。


 其れを取り分けて皆に食べてもらう。


「本当美味しいねぇ」


 イアンパヌの母親が満足そうに言う。


「うん、美味しい!」


 イアンパヌの妹も満足そうだ。


 それから持ってきたフライパンにさばいた鴨を入れて火を通し、一度火からおろし、米を炒めた後アサリ、エビ、火を通した鴨肉を入れて水を加え煮る。


 まあだしもスープもないが、パエリア風の何かが出来上がった。


「んじゃこれもどうぞ」


「へえ、これもおいしそうだね

 早速いただくよ」


「あ、お母さんずるい、私も」


「私もー」


 家族兄弟で取り合わなくても量は十分なはずなんだが……。


「うん、こう口の中でエビがプチッと弾けて、なんともいえないおいしさだね」


「アサリのだしが染み込んだ米も美味しいよ」


「うん、この鴨肉が柔らかく煮られて、エビとアサリのだしが染み込んだのが最高ね」


 まあ、好評そうでよかったな。


 この後噂を聞いたウパシチリたちに同じものを作るようにせがまれたのは言うまでもない。


「あっという間に米がなくなっちまったなぁ……まあいいか」


 ウパシチリがうまそうにパエリア風の炒め煮を食ってる。


「たしかにこれは美味しいですね。

 優先的に稲を作るようにしましょうか」


 俺は其れに頷いた。


「其れもいいんじゃないか。

 やっぱ日本人は米だからな」


 そしてウパシチリが言った。


「それにしてもその土器となんだかよくわからないものはすごいですね。

 調理がすごく便利になりそうです」


「土器じゃなくて土鍋だがな、あとこっちはフライパンっていう。

 まあ、俺にも作り方はわからないから同じものはつくれないけど」


「そうですか、其れは残念です」


 なんか本当に残念そうにしてるが、テフロン加工のフライパンなんて縄文時代じゃどうやってもつくれないからな、同じく土鍋も無理だ。


 こういったものが簡単に作られ売られていたていたのはすごいことだと思うが、労働時間が年2000時間以上になったのを考えると、やっぱサラリーマンは社畜なんだと思えるな。

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