女性用下着とボタン止めの服をを作ろうか

 さて俺はとんだ思い違いをしていた。


「縫い針ってとっくに昔に使われてたんだ」


 そりゃ釣り針が在るくらいだから、縫い針が有っておかしくないわな。


 そもそも、人類がシベリアなどの寒い地域で暮らせるようになったのは、約4万年前に縫い針が発明されたからだ。


 細い骨や牙などを石器で削って鋭くとがらせ、小さな穴を開け、動物の腱をなめして糸にし、それらで鞣した獣や魚の皮を縫い合わせて、体に沿った衣服、靴、帽子、手袋などをつくり上げることで、全身ほぼ全部を覆うことできるようになり、気密性が高い防寒機能を持った衣服が作れるようになった。


 石器時代から縄文時代にかけて日本とバイカル湖周辺との交流も有ったらしいのはそのせいだったか。


 この時ヨーロッパからコーカサスを支配していたネアンデルタール人も、衣服を着ていたことは間違いないが、彼等は縫い針を開発できなかったらしい。


 其れにより6万年ほど前からホモ・サピエンスやクロマニヨン人とネアンデルタール人は交雑しつつ過ごしていたが、およそ5万年前からネアンデルタールの人口が減少し始め、集団が孤立していき、両者は同じ動物を捕獲したことで集落の規模の小さいなネアンデルタール人の集団を孤立させ、イタリアで大規模な火山の噴火が起こった事により4万年前のヨーロッパはひどく寒冷化したことがネアンデルタール人を絶滅させたらしい。


 因みにクロマニヨン人の絶滅理由は弓矢を開発できなかったことのようだ。


 寒さに対応できる衣服の発明の差が集団の数の差になったというのも皮肉な話だ。


 さて、縄文人の衣服だが、下着は男女とも麻の褌、女性用肌着はTシャツの裾を長くしたようなモウルと呼ばれる毛皮や麻などで作られたもの、上着は鹿の皮を2頭分縫い合わせて袋状にして頭や腕が出るようにして袖を付けた貫頭衣型の衣服、まあチャイナドレスみたいな感じだと思ってくれればいいかな?。


 や大麻、苧麻、クズ、アオソ、アカソ、イグサ、ヤマブドウの蔓、樹皮などを糸として紡いで、糸として編み込んだ、浴衣のように前で合わせて帯で結ぶ服などだな。


 基本夏は涼しくなるように通気性の良い麻などの植物性素材の衣服を身につけ、冬には防寒能力の高い革製の衣服を着分けていたわけだ。


 シャツもしくはベスト状の上衣とズボン状の下衣の組み合わせも在るが、ファスナーやフックのような物は当然ないので、ズボンは袋状に織ったり縫ったりした布を脚にあてて、紐で縛るような感じだな。


 脚にも毛皮や、魚の皮で作った靴をはいて、脚の寒さをしいだり、負傷を防いだりと結構先進的だったりする。


「しかし、いまのままだと幾つか欠点があるのも事実だよな」


 貫頭衣タイプの服は脱ぎ着が大変で、前合わせタイプの服は乱れやすいのが欠点だ。


 要するに男も女も裾も留め具もない魔法使いのローブか浴衣を着てるようなものだからな。


「まずは女性用の下着を作ってみようか……と言っても,これは協力してもらわんと作れんが」


 おれはイアンパヌを呼んだ。


「おーい、ちょっと新しい服を作ってみたいんで,

 手伝ってもらえないか?」


 イアンパヌはもちろん拒否はしなかった。


「うん、いいわよ。

 で、何をすればいいの?」


「ちょっと試したいことが在るんで来てるものを脱いでほしい」


「いいけど……一体何を?」


 俺の目の前でイアンパヌに脱いでもらってまず胸の下着を試してみる.


 長方形の布を真ん中でねじって胸の谷間に当たるように彼女の胸に当てて、左右の乳房を包むように当てた後でその左右も捻ることで布を袋状にする。


 要するにチューブトップのブラや水着の用な感じだな


 その後は陰部の下着だ。


 同じよう長方形の布を真ん中でねじって前後に当てて上が彼女の腰骨あたりの位置の長さになるように揃える。


「寒いだろうから一回着なおしてくれていいぞ」


「う、うん……」


 まあ、彼女からしたら意味がわからないんだろうがな。


 俺は胸の形状に合わせて袋状にした乳袋のねじったところを縫って止め、左右に麻ひもを縫い付けるとともにちょっと引っ張ってみてちぎれたり取れたりしないことを確認した。


 同じように陰部用の布も捻っては在るが長方形の角の部分にそれぞれ紐を縫い付けてちぎれたり取れたりしないのを確認した。


「よし、できた」


「できたの?」


「ああ、悪いがもう一度服を脱いでくれ」


「うん」


 俺は全裸になった彼女の胸に乳袋を当てて、その左右に付けた紐を背中で蝶結びにして結んだ。


 同じように陰部に布を当てて腰の左右で紐を結んでみた。


「これでいいと思うが……どうだろう?」


「うん、いい感じだと思う、胸も楽だし下もぴったりだよ」


 乳袋はうまくいかなければ古代ギリシャでやっていた、某かまどの女神様の例の紐のように乳房の下の部分を帯で持ち上げるだけでもいいかとも思ったが、つけ心地が悪くないなら乳袋というか簡素で原始的なブラジャーと紐で結ぶV字のショーツができたわけだからこれで行こう。


 まあ、毎日同じものという訳にはいかないから同じものをあと2つか3つは作らないといけないがな。


 ついでに上着やズボンも着やすいようにしてみよう。


 前の部分を2つに切ってボタン穴を開けてその周りを縫うことで裂け目が広がるのを防ぐようにし、貝殻を丸く削って穴を4つ開けてボタンにしてボタン穴と反対の部分位に縫い付けていく。


 ズボンも前の部分を切ってボタン穴を開けて、ボタンを反対側に縫い付けていく。


「モウルを着たら、その上にこれを着てみてくれ」


「う、うん、どうやって帯を締めればいいの」


「ああ、其れは帯で締めるんじゃなくてこうやって……」


 と俺はボタンをボタン穴に通して服とズボンの前を留めてみた。


「へえ、これ、いいわね。

 帯に比べるとはだけづらいし、脱ぎ着が楽よ」


「ああ、気に入ってもらえたみたいでよかったよ」


「うん、本当にありがとう」


 いや、喜んでくれてよかったよ。


 因みにイアンパヌが自慢気に彼女の母や妹、同じ部落の他の女性達に見せた所で俺に同じものを作るように要求されたのは言うまでもない。


「だって、あんなに胸やお尻が大きく見えるようになるものを彼女一人だけが持ってるのはずるいというものです」


 うん、ウパシチリ、あなたもそういう性格だとは思わなかったよ。


 まあ結局は作ったけどな。


 あと、胸を大きくしたいなら腕立て伏せが、お尻を綺麗にしたいならスクワットがいいらしいよと彼女たちに教えたら皆が暇な時間に腕立てやスクワットをやるようになった。


 そのせいでカップサイズが1つか2つ上がってしまって、乳袋を作り直さないといけない羽目になったのは誤算だったぜ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る