食糧確保のための探索in俺の住んでたアパート

 さて、思っていたより随分と米の評判が良かったこともあり、俺は集落の何人かを連れてアパートに残ってる使えそうなものを回収することにした。


「とりあえず俺が使えるもの使えないものを分けるから、俺が使えると言ったものから持ち帰ってくれ」


 ウパシチリが皆を代表して頷いた。


 しかし、集落の長自らきていいのかね?。


 基本採取は女の仕事なので俺の妻の家族も含めついてきてるのはほとんど女だ。


「わかりました、よろしくお願いします」


 さて俺は俺が住んでいたアパートにたどり着くと、表側の一階大家さんの表玄関ではなく脇にある2階のアパート側玄関にむかってドアを開けた。


 玄関には靴箱が有って、上に上る階段とともに大家さんの部屋につながる木製のドアが在る。


 この構造から考えて昔は大学生などの下宿宿をやっていて、下のリビングのような所でみんなでご飯を食べたりしていたんだと思う。


 俺はドアノブを握って回したが当然鍵が内側からかけられている。


「まあ、やっぱり鍵はかかってるか。

 仕方ない鍵は壊そう」


 俺は石斧をドアノブに付近に叩きつけて壊すとドアを開けた。


 ドアを開けるとそこは予想通りダイニングスペースでダイニングテーブルとイス、食器棚などがおいてあった。


「あれはなんですの?」


「テーブルとイスですよ。

 あれに座ってみんなで食事をするんです」


「そうなのですね。

 作るのはさぞ大変でしょう」


「まあ、大変は大変だと思いますが、色々道具がありますんで。

 今の時代で作るよりはだいぶ楽なはずですよ」


「そうなのですか」


 ダイニングテーブルと椅子とか茶碗や皿、湯呑みなどはもちろん使えるが、急いで持ち出す必要もないだろう、ここはまた今度でいいだろう。


 ダイニングの隣のひとつが台所だ。


「うし、多分使えるものがいっぱいあるはずだ、ちょっと待っててくれ」


 ある意味ここは宝の山だ。

 砂糖、塩、胡椒、七味唐辛子、醤油、味噌、酢、料理酒、ラー油、トマトケチャップ、ソース、マヨネーズ、カレーやシチューのルー、袋入りの味噌汁、サラダ油、一本物のカツオブシとカツオブシ削りなどがおいてある。


 調味料などは基本そんなに簡単には腐らないから持っていって大丈夫だろう。


 梅酒を作るための蓋付き瓶や氷砂糖とともに焼酎もあるな。


 まあ梅がないから梅酒はつくれないが。


「おーい、これをみんなで持っていってくれ」


「はーい、分かりました」


 まずは最優先で調味料などを持ち出した。


 味噌はのこしておいて茹でた大豆と混ぜたら新しく味噌をつくれないかな?


 さて、次は野菜や果物だ。


 冷蔵庫の野菜室を見てみる。


「お、これはラッキーだな」


 もともと休みの日以外はこちらに来ない大家のおじいさんなので、すぐに痛むようなものは入っておらず、濡らした新聞紙でくるんでビニール袋に入ったジャガイモやさつまいも、葱、キッチンペーパーでくるんでジップロックに入れた人参があった。


 他にもたまねぎが一個ずつみかんネットにネットに吊るして干してあったし、かぼちゃもおいてあった。


 流石に昔の人は野菜を長持ちさせる方法をよく知ってるらしい。


 野菜は多分カレーや大学芋、かぼちゃの煮物になんかにしてくおうと考えてたんだろうな。


 冷凍庫にはジップロックに入れてある鳥肉やえんどう豆やほうれん草などの冷凍食品、冷蔵庫には卵が有ったが、流石にこれは食えないだろうから廃棄決定だな。


 飲み物も開いてるものは腐ってるだろうから庭に流して捨てた。


 微妙なのはバターだな、バターは腐りづらいから食えないことはないかもしれないが……まあ捨てておこうか。


 その他には海苔や味のり、缶に入った緑茶、開けてないせんべい、急須や湯呑みなども有った。


 芽が出てるジャガイモやサツマイモ、玉ねぎ、葱は植えたら育つかもしれないし、かぼちゃは種を巻いたら育つかな。


 人参は……流石に難しいかな、まあ一応やってみるか?。


 まあ、野菜や芋が手に入ったのはありがたい。


 量的には多くないから育ててから食ったほうが良さそうだけど、育つかどうかはわからないからかけでは在るな。


「食い物関係ではこのくらいか……じゃあこれをみんなで持っていこうか。

 まな板と包丁と砥石も後はおろし金とピーラーもあれば便利だな」


 炊飯器とか電子レンジとか冷蔵庫とか電気を使うものは全く使いものにならないから持っていかない。


「お、これは蒸し器か、中華鍋や圧力鍋もあれば便利だな」


 台所から使えそうなものをあらかたかっさらって、応接室に移動する。


「テレビ、テレビ台、DVDはもちろん意味ないとして炬燵は惜しいな」


「炬燵……ですか?」


「ああ、あれがうまく使えるとすごく暖かいんだが」


「うまく使えないのですか?」


「温めるために必要なものがないんだよ」


「そうなのですか、残念ですね」


「因みに炬燵はこうやって入る」


 俺はこたつに入って見せた。


「こうですか?あ、すごくふかふかしてていいですね、これ」


 まあ、もちろんこの時代では炬燵の敷布団や掛け布団があるだけでも全然温かいのだろう。


 夏でも土は冷たいから案外役に立つかもしれない?


「まあ、なんだったらウパシチリのところに持っていってもらってもいいぞ。

 脚は折りたためるだろうし」


 基本炬燵はしまえるように脚は簡単に取り外せるか折りたためることが多いからな。


「では、持って帰らせていただきますね」


 ウパシチリがそう言うとイアンパヌが不満そうに言った。


「なんで村長に渡しちゃったのですか?」


「いや、他所から来た人間が一番先にいくのはウパシチリのところからだろ。

 其れに一応は村の共有財産だし」


「そういうことですか、なら仕方ないですね」


 基本的にこの時代では私有の概念は少ない。


 が、まあ全部を全部共有することはできないからそういう場合は村長に託すのがいいんじゃないかな。


 調味料も結局はみんなで一緒に食べて使い果たすだろうし。


 後部屋にあったもので非常に役に立つものがあった。


「お、救急箱じゃん。

 中身はどうかな?」


 開けて中を見るとガーゼや包帯、消毒液や正露丸、ピンセットや薬などが入ってる。


「これがあればしばらくは怪我何かの対処がしやすくなるな」


 俺は救急箱を持っていくことにした。


「とりあえずはこんなところかな」


「そうですか、では皆でもってかえりましょう」


「ああ、そうしよう」


 俺達は手分けして使えるものや食えるものを村に持ち帰った。


 そして芽が出てるジャガイモはすぐに焼き畑の隅っこに植えて、サツマイモ、葱の根っこや芽の出てる玉ねぎ、人参なども植えてみた。


 かぼちゃは煮物にした後、種を一旦乾燥させてからこれもまた植えてみた。


 これ等がうまく育つかは神のみぞ知るだな。


 ちなみの持って帰った調味料は祭りや来訪者がきた時の宴用に使うこととして、緑茶は風邪っぽい症状の人間のための苦い薬とした。


 そうしないとすぐなくなっちまうからな。

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