どんな時代でも家をたてるのは大変だ

 さて縄文時代における住居は竪穴式住居なのは有名だから知ってるだろう。


 実は日本の竪穴式住居は平安時代中期までは一般的に使われていたし、東北では室町時代頃まで、北海道や樺太島や千島列島のアイヌは江戸時代まで竪穴式住居を使っていたそうだ。


 これは寒い場所では高床式住居より暖かく、雪の重みで家が潰れるなどの事故も少なかったからのようだ。


 西国では高床式住居が早めに作られるようになったのは鉄製の木工道具、マサカリやノコギリ、カンナなどの道具の発達によって木材の加工が容易になったことと、湿度が高く蒸し暑い場所では高床式のほうが過ごしやすい場合もあったからのようだ。


 まあ、縄文時代では木材を加工するための道具は基本磨製石器の石斧しかなくて木を切り倒したり削ったりするのは大変だったりする。


 そもそも竪穴式住居とは、横穴つまり洞窟との対比で言われる形態で深さ50cm、直径 5~20mほどの主に円形の穴を掘り、円錐形の屋根を作った家だな、方形の住居もないわけではないのだが、屋根に樹皮を貼る際に方形で出隅のあるものは角がうまく納まらず、屋根を作る時に大変だったりするので円形、もしくは楕円形がほとんどだ。


 直径5mで3~4人くらいと直径7.5mで6~7人くらいが住めるから一つの家族が住んでいたわけだな。


 俺が現在寝ているのは集会所兼交易人などが寝泊まりする中央のでかい住居だが、いつまでもそこに寝泊まりさせるのもどうかということで、俺のすみかを作ってくれるらしい。


 というわけで家造りだが、集落のみんなが手伝ってくれる。


 まずは石鍬を使って地面を掘って円形に穴を掘る。


 約50cmほど掘り下げ、掘った土は周りに積み上げて穴に雨が入らないようにする。


 こうすることにより恒温恒湿性が高まるし、内部空間の高さを確保する事もできる。


 太陽によって地面が温められた地中熱によって、温度変化が少なくなるわけだ。


 地中熱は、深く掘ればほぼ一定の15℃ほどになるが、50cmほどの地表近くだと、外気温の影響を受け、季節によって変動する。


 ただ、その温度の変化は気温とは異なって5月に最低の12℃くらいとなり、11月に最高の18℃くらいになる。


 つまり、地中熱は外気温が高いとき、地中熱は低く、外気温が低いとき、地中熱は高くなる。


 井戸水が、夏冷たく、冬暖かいと言われるのはそのせいだ。


 まあ、土間だと、夏は湿気が強く、冬は底冷えがすると言われる。


 そうなるとイマイチ住みにくそうだが、其れはずっと炉で火を炊き続けることで解消している。


 まあ、毎日毎日火をつけなおすのも大変だしな。


 人の出入りする入口から乾燥した空気を入れ、炉の熱で暖まった空気は、上昇して一番上の換気口から出て行き、其れにより建物内は熱によって乾燥しつつ湿気もいっしょに上から出ていく。


 これは、アイヌの竪穴式住居のトイチセでは、江戸時代まで実際に行われていた。


 原始から行われていた暖房兼換気システムというわけだな。


 地面に直接寝ると体温が奪われるのはガマで編んだ敷物や動物の毛皮をしくことで解消する。


 で掘った円の中央部に炉をおいて、中間となる場所に直径50cm程度、深さ80cmの程度の穴を掘り、石斧で切り倒し、枝をはらい、樹皮をはぎ、生木や葉でいぶして虫を燻し殺した栗の木を柱として建て、ロームブロックといわれる、関東ロームの粘土質の土が固まったもので固め固定する。


 栗は硬く、水に強い上に栗は生長が早く、実をあまり付けなくなった栗の木は伐採して新しい木を植えて栗の安定供給を図っているらしい。


 原始時代の生活の智慧だな


 竪穴式住居の柱は小さめな住居では4本が標準だが、大型の住居では、5本、6本柱のものもあるらしい。


 さて垂直に柱を建て、その頂部を梁でつないで、放射状に垂木を架け、屋根の野地板としてまず燻した樹皮で被い、その上に乾燥させたススキの茎であるかやをのせ、恒温性や耐火性、風で飛ばされないようになどの理由で土も被せれば屋根が完成する。


 家が完成すれば中央の炉に他の場所で焚いている、火を移してもらって中の換気と暖房を行う。


 床の隅には土器の底を切って埋めた貯蔵穴を造り、天然の冷蔵庫として食糧を貯蔵する。


 こうして集落のみんなで協力して俺の家を立ててくれるとは誠にありがたいことだ。


 因みに竪穴式住居は常に煙でいぶされることで、多少の防虫や防腐効果が在るわけだが耐用年数はそんなに長くなく10年したら立て直すのだそうだ。


 まあ、柱なんかの防腐加工してるわけじゃないしこれはどうしようもないな。


 そうして俺が家の完成を喜んでいるとウパシチリがやってきた。


「どうでしょうか、この家は」


 俺は満面の笑みで答えたさ。


「ああ、ありがたいと思うぜ。

 本当に」


 俺の答えにウパシチリも笑顔になった。


「ありがとうございます。

 所で結婚はいつがよろしいですか?」


 俺は彼女の言い出したことに固まった。


「は?結婚?」

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