第8話光の救世主

「アーネスト」

「オスカーか」

 振り向いた先には下半身が付いた、完全体の実験人形ビリー・オスカーがいた。

 白と紫の服を身につけている。インペリアルナイトの制服のようだった。

 ちなみに、オレの服は、黒いエナメル質のジャンパーと同じ素材のズボンのみだ。シャツは着ていない。

 シャツは着ていないのにカルタ大統領は鉄板を殴ったワケだ。うんうん。

 この間見た時点でオスカーはロボ丸出しの体だったのに、人間と変わりない姿をしていた。

「さあ、アーネスト、ここは通してもらうよ」

「そういうわけにはいかない。ここは死守する」

 二本のバットをかまえるオレに対して、オスカーは、背後から大きなカマを取り出す。そのカマは、オスカーの身長とほぼ同じだ。とてつもなく大きなカマだ。

 オレはそれをかまえるオスカーを見る。「やはり手の抜ける相手ではないな」そう感じ取る。

 オレもオスカーも武器を握り直し、同時にかけだした。

 インペリアルナイト同士の戦いがついに始まったのだ。


 怪獣たちが戦う足下で、オレたちは戦っていた。別になんてことは無いんだ。オレはただインペリアルナイトとしての責務を果たしただけだ。オスカーもまたそうだった。

 リシャール殿下についたオレと、国についたオスカー。ただそれだけの話。

 しかもそれは二人で話し合って決めたこと。

 そう、こうなることは最初からわかっていたのだ。だからこそ手は抜かない。

 でもここで疑問が出てきた。リシャール殿下って誰だろう? オレはそんな疑問を持ちながらも、オスカーと戦っていた。

 一進一退、互角の攻防が続いた。

 しかしここで人類と機械の差が出てきてしまった。オレはスタミナがどんどん減っていくが、オスカーは全くスタミナが減らない。おそらくオスカーには、永久エネルギー炉が搭載されているのだろう。恐るべし! インコ真理教。

「さあ、さすがにスタミナに差が付いてきたね。ボクはソーラーリアクターを積んでいるから無限に稼働できるけど、君たち人間はそうはいかない」

「ふん、まだまだだ」

 オレは涼しい顔で言い返してやった。しかしスタミナの問題はいかんともしがたかった。

「自らの技術で滅びるがいい。セレスティアルビーイング」

 意味のわからない言葉を吐きつつ、オスカーはカマをかまえ直した。そして体を輝かせ、辺り一帯を吹き飛ばすようなビームを放った。

 オレはそれをなんとかかわす。かわした先には、リシャール殿下……ではなく、二匹の怪獣がいた。ビームはインコ大仏に当たる。

 今がチャンス! と、アンナがインコ大仏にマウント取って、ボコボコに殴りつけ始めた。

「やれやれ、これはどうもお手上げだね」

 肩をすくめるオスカーに向かってオレは、頭をバットで殴った。

「痛ーい」

 で、済んでいるのは彼が太陽炉搭載型のロボだからだろう。

「おれはしょうきにもどった!」

 するとオスカーは、インコ大仏だったモノに向かって走り出した。

 そして、残骸の中から尊師を引きずり出し飛んだ!

 オレに向かってくる気か? と思ったが、そうではなかった。

 オスカーは尊師を羽交い締めにし、どんどん上空へとのぼっていったのだ。

「やめろ! 実験人形ビリー・オスカー! 貴様まで死ぬぞ!」

「テンサン……シナナイデ……」

 オスカーは、高度が百キロくらいになったところで、オスカーは尊師を抱いたまま自爆した。

 オレはそれを見て素直に思った。

「ヘッ、汚え花火だぜ」

 頬を何かが伝った。


 あの戦いから数日が経った。

 インコ真理教は、警察の介入と指導者を失ったことで、急速に勢力を縮小していった。

 教団が解散するのも時間の問題だろう。

「すごいじゃん、ライネス君」

 ノッチとの会話が弾んでいるように見えるが、オレはそんな気分ではなかった。

「そんなことはない、友を守れなかった。インペリアルナイト失格だ」

 インペリアルナイトとして友人を助けられなかった。それだけが心残りだった。

「キミはもう、光の救世主、『グローランプー』だね」

 ふっと脳裏に蛍光灯という言葉が出てきたが、多分関係ないだろう。

 ともあれ、オレはこれからは「グローランプーのライネス・フォルスマイヤー」ということになりそうだ。

 まったく、今日もいい天気だ。

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