第6話脱出
オレはその後も、何回か脱出を試みた。しかしその度に信者に見つかり、カルマ落としと称してボコボコにやられた。その度にオレはサイコヒーリングを自らにかける。
くそ、せめて武器に使えるバットさえあれば! オレはバットを持たずに歩いていたことを強く後悔していた。
「くそったれめ」
おっと、汚い言葉を放ってしまった。インペリアルナイトにあるまじき言葉だった。反省反省。
しかし、寝てないし食べてもないオレのサイキックパワーもそろそろ限界が近い。温存するか、それとも爆発させて一気に逃げ出すか。
逃げ出すのは簡単だ。しかしそれは一人での話。オスカーと一緒には逃げられない。どうしたものだろうか? わからない……本当にわからないんだ……。
うんうんうなりながら、檻の中で考えること数十分。やはり考えはまとまらなかった。
そしてその内眠くなってきた。ここは少し休むかな。馬鹿の考え休むに似たりって、習ったばかりだしな。
オレは地べたに横たわり、少し眠り始めた。するといいのか悪いのか、信者が二人組で、オレに飯を持ってきた。インコ食というらしい。
このつぶつぶはなんだろうか? とにかくまずそうな、それこそベチャベチャな鳥の餌のようなものを差し出された。
毒が入っている予感がしたオレは、食べずにおいた。
「チッ、食わないか」
「こんなにうまいのに」
信者はインコ食を床に置いた五秒後には、拾い上げてペロリと平らげてしまった。
そしてそのまま雑談を始めた。
「知ってるか? 例の噂」
「なんだっけ?」
「実験人形ビリー・オスカー、完成したらしい」
「マジか」
「マジよマジマジ大マジよ」
「試作型ができたと言うことは」
「そう、今度は量産だな」
「そうすれば」
「そう、不浄なこの世界を一掃できる!」
「尊師の世界になるってスンポウだな」
そのまま信者たちは行ってしまった。
なんだっそら! 耐えられない! インコ真理教は本当に危険な集団だったようだ。
だ、誰かに伝えないと! その前に逃げないと!
横になっていたオレは、信者たちが立ち去った後すぐさま起き上がる。ほんのチョッピリだけだが、サイキックパワーも回復させることができた。
と、思い出した。今回のオリは、今までのオリとは違うのだった。
オリハルコンとかいう伝説の金属を使ったオリらしい。鉄ならひしゃげることもできるが、伝説の金属となると、そうはいかないだろう。
オレはにょっきり出てきたやる気を元に戻し、また地べたに座った。
すると足音が聞こえてきた。
また信者が現れるのか、そう思った。
その拳法着を身にまとったその人物は、オレのいる檻の中へバットを入れた。しかも二本も!
フワリコロリカランコロン。そんな音を立てながらバットはオレの目の前で止まった。
「あ、あなたは」
老人はにこりと笑顔を見せる。
「老師!」
「ワシの息づかい……間の取り方……その一挙手一投足を! その目に……心に……! しかと焼き付けるのじゃ!」
と、そのまま老師は何もせず帰って行った。
老師の奥義が見られると思ったのだが、致し方あるまい。
それよりも、バットが手に入った。ならばやることは一つ。
「脱出だ!」
オレはPKビルドアップを全力で使い、自らの筋肉を膨張させた。
身長は百七十二センチメートルの細マッチョになっていた。以前のような鋼の肉体とはいかなかったが、まあここらが今の実力だろう。
何故ビルドアップできたのか? それは多分気の持ちようというか……。
とりあえずオレは、オリハルコンのオリをバットでブッ飛ばした。
これも木製のバットだからできたのだ。金属バットならひしゃげていたね。
オレはバット二刀流で、その場を後にした。ただし徒歩で。
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