第3話SIGESATO
オレは最近気づいたことがある。
何にって? シゲサトのことだ。オレはあのヤロウが気にくわないって、最近になってようやく気づいた。
だって、アイツ一組だし。不良で、いけ好かないし。それにキザったらしいし、アンナに先に声かけたし。
そんな感じだから、オレはヤツが嫌い。
だからオレはヤツに決闘を申し込んだんだ。
それに、遂にオレもサイキックパワーを使えるようになった。
一つだけだけどね。でも、それは大きな一歩だ。そうに違いない。
というわけで、オレはシゲサトをマンションの前にある、大きな公園へ呼び出した。
ところがシゲサトはなかなか来ない。
何故だ? 場所を間違えているのか? それとも来る途中交通事故にあったとか? もしくは宇宙人に捕まって、キャトルミューティレーションされているとか? ちょっとだけ不安になる。
あ、来た。
「よく来たな」
オレはヤツを褒めてやった。遅刻は許せないが、交通事故にあわなくて良かった。そうホッとする。 あ、あのヤロウ女連れだ! 余計に許せん!
ん? アレはもしやアンナ? ヤロウ、アンナ連れてきやがった! これはもう負けるわけにはいかない! もっとも、元から負ける気は無いけどね。
「やるんだろ?」
ベンチに座ったいい男みたいに言いやがって。絶対に勝つ!
「アンナ、見ててくれ。オレはキミのために勝つ!」
すると、アンナはため息をつく。
「ライネス、あのね」
「ぜーったいに勝利する!」
オレはリュックサックからバットを取り出し、シゲサトにかまえる。
「ライネス、一つ聞いておく。お前」
オレは気合いとともに、シゲサトに向け駆けていく。
「人の話くらい聞けよ」
「聞く耳持たん!」
オレはバット振り上げ、上段からの一撃をヤツに食らわそうとする。
すると、シゲサトは指先からビームを発射した。 発射されたビームは、オレの持つバットに当たり、バットは手から離れる。
フワリと飛んだバットはカラン、コロンと転がった。
オレは思わず舌打ちをする。
「なら持たせてやる」
シゲサトはこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。
コイツにはかなわないのか? その思いが少しだけ脳裏によぎる。
「サイキックパワーもロクに使えないヤツが、オレに勝とうなど」
その言葉を遮るように、オレは立ち上がり、バットを拾い上げる。
「オレもね、一つだけ使えるんだよ」
「何? なら見せてもらいたいもんだね」
オレから不敵な笑みが漏れる。
「PK」
オレは必殺のPKを試みる。そう、『必殺の』だ。
オレの体は徐々に変化していく。
「ビルドアーップ」
その言葉を言った瞬間、体中の筋肉が盛り上がっていく。
そして、身長は百八十センチメートルの、マッチョボディを持ったナイスガイが誕生した。
この鋼の肉体を身につけたオレは、百キロクラスのバーベルも楽々持ち上げることが可能になるのだ。
「さあ、かかって来い」
オレはシゲサトに向かってゆっくりと歩いて行く。
ヤツはオレに向け、ビームを何発か発射したが、そんなものは蚊が刺したのと同然。チョットだけかゆい程度だった。
「なるほど、そこまでサイキックパワーを扱えるようになっていたか」
「負けを、認めてくれるか?」
すると、シゲサトは、目を光らせた。
「しかしその程度ではな」
シゲサトの体も変化していく。
そこにはオレと同等の筋肉を持つ、マッチョダンディがいた。
「オレもこの程度は出来るんだよ」
思わずオレはフロントラットスプレットをかましていた。
逆三角形を作り、上半身の筋肉をアピールするナイスポージングだ。
するとヤツはダブルバイセプスで対応してくる。それは両腕を上げ、上半身の筋肉をアピールしてくる、グッドポージングだ。
「むううん貴様、シゲサト、なかなかやるな」
「貴様もなあ、ライネス」
そこからは大ポージング合戦となった。
美の男神と美の男神の戦い。これはどちらが勝ってもおかしくはない。
それから三時間、ポージング合戦は続いた。
どちらの筋肉ももうヘトヘト。とてもじゃないいがもう戦えない。そんな折も折だった。
つまんなそーに見ていたアンナが口火を切った。「あたしかえるね」
その時だった、どこからともなく光がアンナを照らした。そしてその体を宙に浮かせた。
美しい。
いや、そうじゃない。今彼女はさらわれようとしている。
光の出所が上空にいるUFOからだとオレは気づいたんだ。
オレもシゲサトもアンナを助けようとした。
しかし、オレの手もシゲサトの手も、届かなかった。
アンナは無情にも宇宙人にさらわれてしまったのだ!
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