22-2 入部する?

「期待しちゃったじゃないですか!」

「ダメなら行けそうな感じ出さないでください!」


 透と麻尋はポカポカと先輩を殴る。

 美景はエヘヘと照れながらそれを受け止めていた。


「なんか最近かいちょーの機嫌悪いんだよー。大学生にナンパされたと思って猫被ってたら実は後輩だったとかでー」

「なにその面白そうな話」


 麻尋は食いついたが透がそれを制す。


「なんでダメだったんですか?」

「なんか部室と予算と学校でゲームをする意義がないからだって」

「全部じゃねえか」

「まあ、当然っちゃ当然ね」

「しょうがないか……」


 3人は残念がった。

 しかし、ダメ元での提案だったこともあり、諦めも早い。

 そんな後輩の姿を見て、美景はわざとらしく咳ばらいをした。


「実は私、知ってるんだよねー」

「何をですか?」

「部室があってー、予算があってー、ゲームしてるところ」

「そんな都合の良いところあるわけが……」


 あった。

 放課後、美景に連れられて辿り着いたのは地学室の前だった。

 ドアののぞき窓にはカーテンがかかっており中は見えない。

 この中で何が行われているのかは全く分からないのだ。

 

「ここ、何部なんだ」

「先輩教えてくれないの」

「驚かせたいんでしょ」

「コンピューター部とかじゃねえのか」

「だったら情報室じゃない?」

「その理論で言ったらここ地学部だね」

「地学部とゲームに何の関係が……」


 3人はひそひそと話をする。

 正直なところ3人の美景に対する信頼度はほぼない。

 今回もダメ元といったところだ。


「れっつごー!」


 美景は気の抜けた声と共に扉を開けて中に入る。

 するとそこには筋骨隆々の大男が座っていた。

 この時点で3人は地学部という予想を投げ捨てた。


「どう見ても柔道部」

「空手部じゃねえか?」

「ラグビー部という可能性も……」


 3人は予想の修正を始める。


「やっほー、だいちゃん」

「おう美景。どうした急に」


 美景は大男に気さくに話しかける。

 その姿はさながら猛獣に話しかける小動物のようだった。

 

「私の後輩を自慢しに来たんだ」

「違います先輩」

「じゃあ何しに来たんだっけ?」

「考えて連れて来たんじゃなかったんですか!?」


 美景の天然には麻尋もタジタジだった。

 そんな二人の様子を見て豪快に笑う大男。

 彼は椅子を適当に取り出し、目の前へと並べた。


「まあ、よく分からんがゆっくりしていけ。この地理研でな」


 地理研究同好会。

 3人の最初の予想は、ニアピンといったところだった。

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