21-3 捜索する?

 和己は問い詰められていた。

 得意のポーカーフェイスにひびが入るほどだ。

 京真の部屋で一冊のエロ本が見つかった。

 その話題で盛り上がる中での爆弾が投下された。

 美景が和己の部屋から複数のエロ本を発見したのだ。

 和己は窮地に陥った。

 当然、周囲は説明を求め和己に詰め寄る。

 和己は当初、知らぬ存ぜぬを唱えていた。

 しかし、あまりの追求にとうとう口を割った。


「それは兄さんから没収したものです……」


 嘘である。

 実際は京真への罠として和己が通販で購入したものだ。

 京真がおせろに興味を持つように、内容には偏りがある。

 格闘少女、幼馴染、巨乳JK、ボーイッシュなど。

 そのため、察しの良い者はこれらの本から関連性を見出せる。

 そして、その一人がこの場にはいた。


「和己ちゃん、まだ隠し事あるよね?」

「ひっ……」


 麻尋の菩薩のような微笑みに、和己は恐怖すら感じた。

 全てを見透かされるような感覚。

 ヘビに睨まれたカエル。

 しかし、和己の心はまだ死んでいない。

 最後まで抵抗を続ける。


「隠し事なんてあるわけないじゃないですか」

「ならどうして最初に知らないフリをしたの?」

「それは……、兄の名誉を守るために……」

「だったら何故、部屋の捜索を止めなかったの?」

「……」

「それに没収したなら捨てたらいいでしょ。私は捨てた」

「尋生さんエロ本持ってたんだ……」

「ヤンキー女が清楚になって……みたいなやつだった」

「結構設定を重視するタイプなんだね」

「私のお兄ちゃんはどうでもいいの。和己ちゃん。どうなの?」

「……」


 言えない。

 この場で言う事はできない。

 それではおせろに聞かれてしまう。

 おせろと兄が結ばれるように行動している事がバレてしまう。

 だから、なんとかしてこの場を乗り切らないといけない。

 どうすれば麻尋の毒牙から逃れられるか。

 和己はその事を必死で考えていた。

 しかし、思いつかない。

 何と言えばいいのかがわからない。

 和己は絶体絶命だった。

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