20-6 恋バナする?
「く、暗くなってきたし、そろそろ帰る時間じゃないか?」
これは流石に苦しいか。
おせろはすぐに後悔する。
あまりにも不自然な会話の転換。
察しの言い麻尋あたりならば突っ込んできてもおかしくはない。
そう予想したが、誰もおせろを問い詰めようとはしなかった。
「そうですね。そろそろお開きにして皆さん帰りましょう」
おせろの言葉に和己が同調した。
えー、と不満を口にするのは最も関係の薄い美景。
その他の面子はお菓子のごみを片付けたりし始める。
そんな中、和己がおせろに近寄る。
「おせろさん。明日は休みですし、今日は久しぶりに泊っていきませんか」
「いいのか!?」
和己の誘いにおせろは喜んだ。
千堂家に泊まるなんて何年ぶりだろう。
思いを馳せるおせろの両肩に背後から手が伸びる。
「私も泊まるー!」
美景であった。
この中で最もおせろとの関係が希薄な美景。
何故、という思いがおせろの中で渦巻いた。
しかし、美景の発言は思わぬ余波を生んだ。
「なんの話ですか先輩?」
「おせろんが今日泊まるんだってー。だから私も泊まるの」
「それはいいですね。私も泊まろうかな。透は?」
「私も和己ちゃんと一緒に寝たい!」
「そんな話はしてません!」
「お前らも泊まるのか!?」
自分一人だけ思い出に浸りながらしっとりと泊まると思っていたおせろ。
美景の乱入により、続々と参加者が増えてしまった。
予想外の展開に困惑するおせろ。
そんなおせろの肩に手を置き、麻尋は耳元で囁く。
「これで恋バナの続きができるね」
「ひっ」
おせろの背筋に冷たいものが流れた。
「さて、そうと決まれば邪魔者を排除するか。京真くーん!」
「何だ?」
麻尋は飲み物を片付けていた京真を呼び寄せる。
「私たち泊まるから、この家から出てって」
「え」
それは命令だった。
この家の住人である京真への強制退去命令。
さすがにこれは受け入れられないという表情を見せる京真。
しかし、思わぬ増援が現れた。
「兄さん。出てってください」
「和己まで!?」
京真は妹にまで退去を促された。
和己として正当な判断である。
思春期の兄が5人もの女性と一つ屋根の下で過ごす。
そんなことを許すことはできないのだ。
おせろだけなら問題はない。
しかし、別の女性と一夜を過ごし、間違いがあれば……。
そんなリスクを考慮しての和己の選択であった。
だが、京真はその選択に納得いかず、抵抗を見せる。
「じゃあ俺はどこにいればいいんだ!」
「誰か知り合いの家に泊まればいいでしょ」
「そんないきなり泊まれるかよ!」
「たしか友達が『めちゃくちゃいる』って言ってましたよね?」
「それは……」
京真は家を締め出された。
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