20-3 恋バナする?

 麻尋はその場の流れを支配していた。

 うるさい和己を黙らせ、透と京真はすでに攻略済み。

 先輩である美景はいつも通りマイペースなので放置で問題ない。

 唯一の懸念材料であるおせろは想定外に大人しかった。

 そのため麻尋は自由に行動できる。


「それじゃ、そろそろ始めますか」

「始めるって何を?」

「そりゃあもちろん、恋バナでしょ!」


 おお、と一瞬場が盛り上がった。

 しかし、すぐに静かになる。

 恋バナにはリスクが付き物だからだ。

 女子同士だからこそ言い合える本音というものがある。

 だが、それも信頼できる相手との関係性があってこそ。

 この女子会には男子一人が混ざっている。

 加えて初対面も複数いる。

 安易な言動はできない。

 こんな危険な舞台に上がる無謀なものはいないだろう。

 そんな雰囲気の中で動きを見せるのは、当然力を持った者だ。


「それじゃあ最初は……」


 麻尋が誉ある一番槍を指名しようとする。

 これは危険だ。

 多くの者はそう判断した。

 一番手は絶対にとってはならない。

 なぜなら一番手とは、今回の恋バナにおいて、どのラインまでがセーフなのか見定めるための毒見役に他ならないからだ。


「そういうのは言い出しっぺがやるべきです」


 麻尋に対抗したのはまたも和己だった。

 先ほどは言い任せれた和己。

 だが、今回はそうはいかない。

 和己には秘策がある。

 数の利。

 麻尋という絶対的強者が君臨するこの場だからこそ成立する手段。

 麻尋以外の弱者との共闘を和己は狙ったのだ。

 そしてそれは成功する。


「私も聞きたいな」

「うん。麻尋の恋バナってあんまり聞いたことないし。先輩も聞きたいですよね?」

「そうだねー。まひろんがどんな話をするのか楽しみだよー」


 和己の提案に3人が共鳴した。

 麻尋の先輩である美景は、もう決定事項のように扱っている。

 麻尋に逃げ場は無かった。


「仕方ないな。じゃあ私からって事で」


 ほっと一息ついて麻尋の話を聞く各人。

 麻尋は顎に手を置いて話し始めた。



 

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