20-1 恋バナする?

「僕からすればあなたも不審者なんですけど」


 そう言い放ったのは和己だった。

 面と向かって言われたのは麻尋だ。

 それもそのはず和己と麻尋は初対面。

 麻尋は和己とおせろの事を話で聞いている。

 しかし、逆はまだ無いのだ。


「私は透の友達の皆越麻尋だよ」

「じゃあ兄さんとは無関係ですよね。何しに来たんですか」

「京真君の友達でもあるけど」

「嘘です。兄さんに友達はいません」

「めちゃくちゃいるわ!」


 京真は無視し、麻尋に対し敵対心を露わにする和己。 

 これ以上おせろの恋敵を増やすわけにはいかない。

 兄に近づく悪い虫を減らさなければ。

 そういった思いからの行動である。

 一方で生意気な少女に喧嘩を売られた麻尋は黙っていない。

 意地悪く笑って和己に語りかける。


「実は私と京真君は特別な関係なんだよ」

「特別な関係!?」


 真っ先に反応したのは透だった。

 麻尋は透の顔を一瞬見る。

 それは、面倒だから黙ってろという意味を持つ視線だ。

 

「そんなの嘘です」


 和己は透ほど単純ではない。

 すぐに否定の言葉を返す。

 しかし、ここまでは麻尋の想定内。

 切り返しのカードは握っている。


「京真君、私の事を見てどう?」

「お前を見て?」

「お前?」

「うっ……」


 迂闊な言葉遣いをした京真に麻尋は釘を刺した。

 その時、京真は思い出す。

 とある日の恐怖とトラウマを。

 

「麻尋様を見ると、動悸がする」

「ドキドキするって事ね」

「兄さん!?麻尋様って何ですか!?」

「これで分かったでしょ」

「確かにただならぬ関係ですがこれは多分違うやつです!」


 

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