19-3 女子会する?

「もう一個食べていーい?」

「良いわけねえだろ、ちゃんと答えろ!」


 京真は得体のしれない少女にきつく当たる。

 少女は頬を膨らませて不満をアピールする。

 それほどまでにこのせんべいを気に入ったのだろう。

 彼女は2本の指を下で舐めた後、京真を指差した。


「そんな事言っていいのかなー?きょーちゃん」

「きょーちゃん!?」


 京真はやけに馴れ馴れしく名前を呼ばれて驚く。

 まさか自分が覚えていないだけで親しい間柄の人物なのかもしれない。

 京真の中にはそういった思いが渦巻く。

 驚いたのは京真だけではない。

 

「きょーちゃんって何だ?京真」

「どういう事ですか兄さん。説明を」


 おせろと和己である。

 彼女は二人の知り合いでもないらしい。

 二人は彼女と親し気な京真との関係性を気にしていた。


「まったく身に覚えがねえ……」

「そんなー。恋人のなんたるかを語り合ったのにー?」

「京真!」

「兄さん!」

「本当に知らねえって!」


 京真が必死に弁解していると麻尋が口を挟んだ。


「先輩、それ私と話したやつです」

「あれー、そうだっけー」


 人違いという事で難を逃れた京真だが、それでも疑問は尽きなかった。


「先輩……?」

「うん。先輩だよー」


 ゆるい話し方からは威厳を全く感じられない。

 先輩風のかけらも吹かない温かみのある声だ。

 そのため初対面の3人は彼女の言葉を全く信じられないでいた。

 そこで、麻尋が彼女の説明を始めたのだった。


「控えよろう控えよろう。この方こそ入学試験で最下位ながら愛嬌だけで柴北学園に入学したとされる伝説の2年生、私と透の中学の先輩、生徒会副会長、檀崎美景だんざきみかげ様だー!」

「いえーい」


 

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