18-4 好きな人?
「透、私も弟子にしてよ」
それはいきなりの提案だった。
おせろが透に弟子入りを志願したのだ。
「この人がおせろさんの師匠に!?そんなのダメです!」
「透お姉ちゃん」
「おせろ」
「今は呼び方なんていいじゃないですか」
「呼び方は大事だよ和己ちゃん」
「そうそう。コミュニケーションなんだから」
「うぅ……」
年上二人に責められて和己はたじたじである。
そこでおせろが思い出したかのように話し出す。
「京真は透を師匠って呼んでたし、私も師匠って呼んだ方がいいのか?」
「絶対やめて」
「えー、いいじゃんか師匠。かっこいいし」
「京真も普段は名前で呼んでるの」
「そうなのか?見たことないけどな……」
「たぶん名前で呼ぶのが恥ずかしくて師匠って呼んでるんだと思う」
「私は普通に呼び捨てなのに……」
今、二人の間には似て非なる考えが浮かんでいた。
透はおせろに嫉妬していた。
おせろと京真が名前を呼び捨てで呼び合う関係性の深さに嫉妬したのだ。
一方、おせろは透に嫉妬していた。
名前を呼ぶだけで恥ずかしがるなど、おせろには経験が無かったからだ。
ついでに和己は京真に共感していた。
つい今しがた、おせろを呼び捨てで呼ぼうとするも、恥ずかしくて失敗したからである。
「じゃあこれから透は私の師匠ってことで」
「それはいいけど師匠って呼ばないでね」
透は改めて釘を刺す。
しかしおせろは気にする様子も無かった。
「たとえ師匠でも私は絶対負けないから」
「え?うん、望むところだよ?」
おせろが決意を秘めた瞳で透に宣言した。
透ははじめ、何についての言葉なのか分からなかった。
数秒考えた結果、VWOのことだと思い返事を返す。
向上心の強いおせろらしいなと透は感心した。
だが、おせろの言葉はVWOについてではない。
透はそのことに気付いていないが、和己は気が付いた。
(おせろさんと透が、僕の兄を取り合ってる!?)
そう、これは間違いなくおせろからの宣戦布告。
しかし、当の透はそれに気が付いていない。
が、奇跡的に会話が噛み合い徹底抗戦することとなった。
そんな状況を目の当たりにした和己は動く。
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