18-5 好きな人?

 和己はおせろの味方である。

 そのため、兄を取り合う二人がいるならばおせろをサポートするのは必然。

 この時もおせろが優位になるように戦況をコントロールしようとした。


「ところでおせろさん。しばらく見ない間に大きくなりましたね」

「ん?そうか?まあ和己もそのうち背は伸びるさ」

「身長じゃなくてここですよ、ここ」

「うわぁ!和己!」


 和己は両手でおせろの胸を優しく揉んだ。

 その行為におせろは飛び退き、自分の胸を両腕で隠す。

 和己曰く、これはおせろの優位性を透に見せつけるための作戦。

 あくまでサポートであり己の欲望のための行動ではない。

 と、和己は自分に言い聞かせている。

 

「そう思いませんか、後鳥羽さん」

「えっ!?う、うん……、そうだよね……」


 いきなり振られた透は驚いたが、気になっていたのだ。

 どうしてスリムなのにそんなに胸が大きいのか。

 どうやったら胸が大きくなるのか。


「何かコツとかあるんですか、おせろさん」

「私も聞きたいな」


 透同様、和己も大きくする方法に興味があった。

 胸が大きければ男の子と間違われることも減ると思ったからだ。


「それは……」

「それは……?」


 おせろは言い辛そうにしていたが、二人の期待の眼差しに観念したのか、もじもじしながら小声で打ち明けた。


「好きな人の事を考えながら揉むと大きくなるって雑誌に書いてたから……」

「書いてたから!?」

「書いてたから……、こう揉んだら大きくなった……」

「揉んだら大きくなる……」

「……」

「……」


 3人は無言になった。

 無言で自身の胸を揉み始めた。

 それはあまりにも異様な光景である。


「和己、おせろ達もう帰っ――何やってんだお前ら!!」


 リビングから様子を見に来た京真が見たのはその光景であった。

 京真は恐ろしいものでも見たように、一目散にリビングへと逃げ帰った。


「ところでおせろさん。好きな人って一体誰の事ですか?」

「そ、それは誰でもいいだろ!」


 和己の質問に動揺したおせろの視線は、京真の消えたリビングの方に伸びていた。

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