17-6 一緒にする?
おせろは楽しんだ。
時間を忘れるほどVWOに熱中したのだ。
はじめは乗り気じゃなかったがやってみると心変わりした。
体を動かすイメージがリンクする。
思ったように動くことができる。
様々な相手と戦える。
それがおせろにとってたまらなく嬉しい。
おせろがゲームを終了したのは日が落ちてからだった。
「あー、楽しかった!」
「それは良かった」
「ね?京真が優しく教えてくれたでしょ?」
「透うるさい」
「おせろ拗ねてる~」
透とおせろはすっかり仲良くなっていた。
VWOのプレイ中も和気あいあいとした雰囲気だった。
京真と透は、おせろのプレイをPCでモニタリングしていた。
二人は初心者であるおせろに操作方法を教えていたのだ。
おせろの飲み込みは早く、センスも良かったため教えることはすぐになくなった。
そのため途中から二人は、野次と歓声をあげるだけ。
それでも非常に面白く、時間が経つのを忘れてしまった。
「ありがとう京真。いい気分転換になった」
おせろは帰り支度を済ませ京真に告げる。
すると、京真は改まっておせろに正対した。
「VWOは楽しかったか?」
「見たらわかるだろ。めちゃくちゃ面白かった」
「そうか、それは良かった」
「何だよ。なんか言いたげな感じだな」
おせろの直感は当たっていた。
京真はおせろに伝えたいことがあった。
今日おせろにVWOをプレイさせた理由だ。
「俺は昨日おせろの事をエロい目で見てるって言ったよな」
「何だよ、突然……。言ってたな変態」
「これでも自重してるつもりなんだよ。それでおせろの事を避けてたから組手もやらなくなったんだよ」
「それも昨日聞いたよ……」
おせろは何も気にしていないように振る舞う。
しかし少しだけ悲しい表情をしていた。
「でもこのVWOならそんな事気にしないで組手ができると思わないか!?このゲームの中なら前みたいに一緒に遊べるって」
それが今日、おせろにVWOをプレイさせた理由だった。
身体的な接触も仮想現実の世界なら緊張せずにできる。
そうすれば昔のようにおせろと過ごせる。
おせろに寂しい思いをさせずに済む。
幼馴染との縁を切りたくないという思いは京真も同じだったのだ。
「何それ」
おせろは俯いた。
時間が静かに流れる。
頬を伝う雫が床に零れ落ちていく。
「仕方ないな!」
おせろはそう言って笑った。
涙の跡を隠そうともせずに目を細める彼女。
その表情に京真は思わずドキッとしてしまった。
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