14-4 本当の気持ち?

 千堂京真と名倉おせろ。

 幼いころから兄弟のように仲の良かった二人。

 京真よりも体の成長が早く、背の高かったおせろは強かった。

 中学時代もよく組手を行っていた。

 最強を目指してからもおせろには世話になっていた。

 

 そんな彼女は徐々に変わっていく。

 少し遅れて、胸が大きくなっていったのだ。

 はじめは京真も気にしてはいなかった。

気にしないように努めていた。

 しかし、次第に凶暴になっていくおせろの魅力に京真は屈した。

スポーツブラやアンダーシャツでは隠しきれない女性的成長。

 胸だけではない。

 顔立ちもあどけないものから大人びて綺麗になった。

 帯でくびれが強調された腰に気付く。

 首筋を流れる汗を目で追ってしまう。

 鍛え上げられた四肢が触れ合うたびに緊張する。

 ちらりと顔を覗かせるへそに吸い込まれそうになる。

 そして、おせろの動きに合わせて揺れるその胸に、京真の脳はショート寸前に陥るのだ。


「自覚が無さ過ぎる……」


 京真は一人、天井を眺めながら呟く。

 今日もまた、おせろの体を眺めたいという本能的欲求を堪えてきた。

 そのために必死でおせろから目を逸らしてきたのだ。

 おせろは純粋に武術を極めようとしている。

 そんな彼女を下心を持った目で見ることはしたくない。

 大切な幼馴染を邪な理由で汚したくない。

 それ故に、おせろには本当の気持ちを伝えられないでいたのだ。

 だが、そうも言っていられない。

 彼女の言葉に京真は答えられなかった。

彼女は答えを求めて苦しんでいるというのに。

 京真はその事を今でも悔やんでいるのだ。

 ずっとその時のおせろを思い浮かべている。

目を閉じれば彼女の姿がありありと目に浮かぶ。


「ああ、クソッ!」


 おせろの気持ちを京真は理解しているつもりだ。

 おせろはまた昔みたいに幼馴染として過ごしたいだけ。

 それができていないのは決しておせろのせいではない。

 幼馴染に下心を持っている自分が悪いのだ。

 京真はそう考えていた。

 だからおせろを避けていたのでは解決はしない。

 京真は決意して立ち上がる。

 

「明日、もう一度おせろと話そう」

 

 そして伝えるのだ。

 おせろの体があまりにもエロいから避けていたのだと。

 殴られる準備はできていた。

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