14-3 本当の気持ち?

 京真は天井を眺めていた。

 自室のベッドで仰向けに寝転がんでいる。

 おせろの家の道場の手伝いは終わった。

 その間、おせろとは一言も話しをしたなかった。

 家に帰り、シャワーを浴び、部屋着に着替えてもまだボーっとしている。

 考え事があるのだ。

 それは当然おせろのこと。

 京真の脳裏にはおせろの表情が焼き付いて離れない。

 目を赤くして涙ながらに問いかけるおせろ。

 胸に手を当て、一歩ずつ近づくその姿。

 それに対して京真は答える事ができなかった。

 京真は自身の本当の気持ちに気付いていた。

 気付いていたからこそおせろには言えなかったのだ。


「おせろ……」


 つい彼女の名を口にしてしまう。

 京真は感情を隠すのは得意な方ではない。

 しかし、おせろには隠しておきたい気持ちがあったのだ。

 それがおせろのため。

 そう思っていた。

 だが、違った。

 おせろは苦しんでいた。

 変化する京真の態度と関係性に悩んでいた。

 おせろの言葉を聞いて、京真は考えさせられる。

 本当の気持ちを伝えるべきなのではないか、と。

 そして、京真の口からその気持ちが零れ、暗い部屋に響いた。


「エロすぎだろ……」


 京真がおせろに抱いていた感情は、下心だった。

 

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