13-5 その女だれ?

 透は悩んでいた。

 自覚のないエロボディについて、おせろに何と伝えるべきか。

 透は悩んだ末、一旦話を変えることにした。


「その、後鳥羽さんって呼び方変えない?私、自分の名字があんまり好きじゃないんだよね……」

「え、そうなのか?カッコいいのに……」


 おせろは残念そうな表情を見せた。

 透はその単純な姿を見て、京真と似ているなと感じた。

 やはり長らく共に過ごすと、どこか思考が似てくるのだろう。

 透は麻尋の顔を思い出して、少し笑った。


「じゃあ透、私のことはおせろって呼んでよ」

「いいの?」

「変な名前でしょ」

「えっ……」


 透は返答に困った。

 変とまでは言わないが、変わった名前だと思っていたのだ。

 透は自分の名字が変わっているのが嫌だった。

 みんなと違う。

 普通じゃない事が嫌だったのだ。

 だから笑顔で話す彼女を不思議に思った。


「うん。すこしだけ」

「私もそう思う。でもさ、私はこの名前が好きなんだ」

「そうなの?」


 透はまた驚く。

 彼女の考えは透とは全く異なるようだった。

 透は中学時代、よく男の子と間違われた。

 男女どちらともとれる名前と当時の見た目のせいだ。

 麻尋に改造された今とは違う、ボーイッシュな容姿だった。

 そのため、透はおせろに親近感を感じていた。

 中学時代の自分の姿を重ね合わせていたのだ。

 名前が変わっているという点も共通している。

 もっとも、おせろは透と違い荒れてはいないが。

 とにかく、共感できると思っていた。

 しかし、実際はそうではない。

 おせろは自分の見た目を気にしていないし、自分の名前が好きなのだ。


「私はおせろって名前が好き。だって白黒はっきりしてるんだから」

 

 単純。

 それでいて、彼女の性格が窺い知れる理由。

 透はその言葉で、おせろの事を少し理解した気がした。

 だが、おせろの話はそこで終わりではなかった。


「だから、私から逃げてばっかりで戦いもしないような卑怯者は嫌いだ」


 おせろの声が、低く、冷たいものに変わった。

 その視線の先にいるのは京真。

 京真は未だにおせろと目を合わせようとしない。

 3人の間には、重く不穏な空気が流れた。

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