13-4 その女だれ?

 「幼馴染!?」


 透は嬉しそうに聞き返した。

 京真曰く、名倉おせろなぐらおせろは幼馴染らしい。

 透は麻尋から借りた漫画で知っていた。

 幼馴染とは結ばれることがない。

 これは恋愛の鉄則である。

 少なくとも透の頭の中では、である。

 とはいえ、透は安心した。

 安心したら自然とおせろとも話せるようになった。

 彼女は背が高く、華奢でボーイッシュな印象だった。

 サラサラの赤い短髪にハキハキとした言動。

 男勝りという言い方もあるだろうか。

 しかし胸はある。

 それほど大きいというわけではない。

 しかし、細身な体においては主張が激しいように感じられた。

 彼女の身に纏う、白の道着姿では特にだ。

 京真とおせろは、透が二人を見失った間に着替えを済ませていた。

 彼女の道着姿は、煌々の制服の時よりもしっくりとくる。


「京真は私の親父に頼まれたんだ。久しぶりにうちの道場の手伝いをしろって」

「ここ名倉さんの家なの?」


 おせろは京真を連れて来た目的を話した。

 親指で背後の大きな建物を示しながらだった。


「ああ!ここがうちの道場。昔はよく京真と組手してたよ……」

「そうだな……」

「ふーん。空手の道場って事?」


 二人の関係性が見えてきた。

 幼馴染で昔からの稽古仲間。

 京真が戦闘狂になった一因もここにあるのだろう。


「いや、武術全般だ」

「武術全般?」

「打撃、投げ技、寝技もあり。あ、武器はナシだね」


 なんてバイオレンスなんだ、と透は思った。

 

「それで、手伝いって何をするの?」

「今日はうちに体験入門が来るからその対応だ」

「ほとんどが男だからな」

「私は男でも女でも関係ないんだけど」


 京真の発言におせろが突っかかった。

 京真はおせろとは目を合わせずにそっぽを向きながら答える。 


「おせろは良くても相手は困るだろ」

「何それ。私じゃ相手にならないって言いたいのか?」

「そういうことを言ってるんじゃ……」


 ムッとした表情のおせろ。

 対する京真はそれを見ずとも理解していたのだろう。

 呆れるように呟いていた。

 透はそんな京真を珍しがって眺めていた。

 こんなに大人しい、常識人ぶった京真は初めて見たのだ。


「後鳥羽さんはどう思う?」

「えっ……」


 いきなりのご指名に透は驚いた。

 何と答えれば正解なのか透にはわからない。

 どちらかと言えば、透は京真の意見に賛同していたのだ。

 おせろのスタイルは抜群だ。

 道着を締める帯で腰の括れが強調される。

 隠れてはいるが、動けば胸の揺れがわかる。

 こんな悩殺ボディを無闇に見せびらかすわけにはいかない。

 だからこそ道場の師範であるおせろの父が、京真に手伝いを依頼したのだ。

 そう透は推察していた。

 しかし、それを素直に言うわけにはいかない。

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