13-2 その女だれ?

 透は走っていた。

 何故なら、尾行対象の京真が走っているからだ。

 透は運動には自信がある。

 だが、体力は大してないのだ。

 そのため、普段から走りなれている京真を追うのは至難の業。

 視界の奥に京真の人影を捉えるのでやっとの状態が続いた。


「やっと止まった……」


 体力の限界に差し掛かったところで京真が足を止めた。

 透は汗を拭いながら、京真に向かって歩く。

 あくまで見つからないように細心の注意を払っている。

 京真が向かったのは公園の中だった。

 ここで何をするのだろう。

 透は想像し、結論を出す。

 ここは待ち合わせの場所だ。

 ここで人と会い、また移動するのだ。

 透はバス、電車での移動に備えて財布を取り出す。

 幸い小銭も交通系のICカードも持っていた。

 それらを乱暴にポケットにしまって京真に視線を戻した。


(誰を待ってるんだろう……。親?兄妹?それとも友人?よく考えたら私、京真の事って何にも知らないんだな……)


 入学初日に出会ってから6日。

 短い間に様々な事があった。

 しかし、二人は互いの素性をよく知らない。

 透が京真の宿敵、ゴッドアレスであることは秘密である。

 そのため、透は過去の話題は極力避けてきた。

 結果、京真の過去や交友関係についても言及していないのだ。

 そして、透は不安に陥る。


(あれ……?放課後に公園でこっそり待ち合わせって、麻尋から借りた漫画でそんなシチュエーションあったな……。たしかその時はアイドルと秘密のデートを……。まさか京真!?)


 透は京真の事をよく知らない。

 そのため小さな疑念が疑惑に変わる。

 実は京真にはすでに恋人がいる。

 透はその可能性を見出してしまったのだ。

 二人の関係は恋人役に過ぎない。

 それ故に、京真に本物の恋人がいたとしても致し方ない。

 

(京真に彼女がいたらどうしよう……)

 

 透は揺れていた。

 今すぐここから逃げ去りたい気持ち。

 京真の待ち人を見届けたい気持ち。

 二つの感情に板挟みになっていた。

 そして決めた。

 京真を信じ、見届ける事を。

 京真に恋人はいない。

 透はそう願って、息を潜める事を続けた。

 そして、京真がスマホで時間を確認した時、待ち人は現れた。 


「ごめん京真!遅くなった!」

「おせーぞ、おせろ」

「ごめんごめん。抜け出すのに時間かかっちゃって」


 待ち人は「おせろ」と呼ばれる人物。

 短い赤髪がよく似合う、ボーイッシュな少女だった。


 

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