12-1 なんて呼ぶ?

 透は戸惑っていた。

 京真からセクシーな下着を受け取ったからだ。

 そしてその戸惑いを声にする。


「こんなもの渡してどういうつもりだ!」

「師匠に似合うと思ったんだ!」

 

 対する京真は動転しながらも即座に答えた。

 そう答えるしかなかったのだ。

 何故なら京真は中身を知らなかったから。

 京真は麻尋から受け取ったものをただ渡しただけ。

 その事実を透に話すことはできない。

 もしそれを告げれば、透の怒りは再燃するかもしれないからだ。

 だからこそ、京真は自分の意志で選んだと答えるほか無かった。

 ものすごく恥ずかしいが、それしか手が思いつかなかった。


「私に、似合う……?」


 恥ずかしいのは透も同じだった。

 衆目に晒されながら艶やかな下着を渡されたのだから。

 だがそれ以上に、京真の言葉に動揺した。


(私に似合うって言った!?

 ってことは私がこれを着た姿を想像したって事!?

 こ、こんな恥ずかしい下着を私が……。

 

 イヤ!ダメ!これはエッチ過ぎる!

 スケスケだし、布も小さいし、何より私じゃ胸が……。

 って、そもそも私はこんなもの絶対着ないから!)


「俺の気持ち、分かってくれたか……?」


 京真は不安そうな声で問いかけた。

 まんまと麻尋の策略にハマり、下着を渡す羽目になった。

 だがこれも師匠である透の機嫌を直すため。

 そのためならば甘んじて恥辱も受け入れる。

 その覚悟が京真にはあった。

 しかし、最も大事な点が京真は不安で仕方ない。

 透が謝意を受け取るかどうかだ。

 ふざけていると思われたらどうしよう。

 そんな思いが京真に生まれ、問いかけるたのだ。


 だが、透はその問いを曲解していた。


(俺の気持ちって何……!?

 まさか……、これを着て欲しいって事!?

 そ、そりゃそうだよね。

 コイツが私のために選んだんだから……。

 でも、これは流石に……。

 いや、そもそも下着姿を見せる事なんて無いし!

 そんな恥ずかしい機会ががあるわけ……。

 え……、まさかそういう事?

 下着を見る機会が欲しいって事?

 もしかして私、遠回しに告白されてる!?

 みんなの前でプレゼント……。

 そうだ、やっぱりこれ告白だ!

 私いま、コイツに告白されてるんだ!)


 透は、恋愛における常識が著しく欠落していた。

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