11-4 なに渡す?

 透は高揚していた。

 嬉しかったのだ。

 お詫びとはいえ、プレゼントを貰った事が。


「開けても良い?」

「あ、ああ……」


 京真の言葉が濁った。

 その言葉に各人は反応した。

 透は照れているのだと感じた。

 涼は不可解に思った。

 麻尋は笑った。

 そして、京真は焦っていた。

 京真は、袋の中身を知らないのだ。


 土曜日に麻尋に叱られた京真。

 月曜日に透へ謝罪するよう命じられた。

 その時に麻尋に手渡された武器がひとつ。

 それこそが可愛らしい袋である。


「中身は何だ……?」

「秘密。でもこれで謝罪はうまくいく」


 麻尋のものすごい自信に、京真は押された。

 麻尋考案、透との仲直り大作戦を認証。

 それが開始されたのだ。

 そして、現在計画は最終段階に至っている。

 袋の中身に京真の命運が懸かっている。

 透が丁寧にリボンをほどく。

 京真は息を呑む。

 袋の中からゆっくりと姿を現したそれに、周囲は歓声を上げた。


「な、な、な……」

「えっ、こ、これは……!」


 透は赤面した。

 京真は青ざめた。

 麻尋は腹を抱えていた。

 

「こんなもの渡してどういうつもりだ!」


 透は顔を真っ赤にしながら京真に詰め寄った。

 その手にはプレゼントが固く握られていた。

 それは妖艶な、深紅の、際どい下着だった。

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