11-2 なに渡す?


「おはよ~」


 気の抜けた挨拶が教室に木霊した。

 クラスメイトが待っていた人物が教室に現れたのだ。

 皆越麻尋である。

 一瞬の静寂の後、女子生徒が麻尋に群がる。

 その目的は、京真と透の関係について聞くため。

 金曜日の放課後に恋のキューピッド宣言をした麻尋。

 彼女ならば二人の進展具合を知っている。

 そう思って大勢が囲み取材を始めたのだった。

 彼女たちは小声で質疑応答を開始する。


「先週の話し合いはどうなったの!?」

「えー、納得できる話し合いになったと思います」

「具体的にはどんな話を?」

「そこはご想像にお任せします」

「ぶっちゃけ二人は付き合ってるん?」

「プライベートは本人に任せているので何とも」


 芸能人のマネージャー気取りで麻尋は質問を躱していく。

 モヤモヤが増していく女性陣。

 そこに一人の男子生徒が参入する。

 クラス1軽い男、筧涼である。

 しかしこの男の洞察力は鋭い。

 核心をつく質問を麻尋に投げかける。


「今回の謝罪、二人の間に何かありましたよね?」


 こちらは芸能記者気取りだ。


「それは……」


 唐突に切り出され、麻尋は言葉に詰まる。

 そこを逃す涼ではない。


「透氏の表情も前回と違います。二人の関係に変化があったのでは?」

「プライベートな質問には答えかねます」

「答えかねる様な関係という事ですか?」

「適切な関係を模索しているという事です」

「それはまだ付き合うには至ってないということ?」

「ご想像にお任せします」

「なるほど……」


 麻尋と涼の間で謎のバトルが繰り広げられていた。

 そんな折、京真が麻尋の到着に気付いた。

 準備は整った。

 ここでついに、京真が動く。

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