10-2 怒られる?

 京真は語り合っていた。

 相手は伊代という少女だった。

 

「おい、アンタ!」


 京真は対戦を終えた相手に話しかけた。

 相手の確かな技術と状況判断。

 そして戦略について聞きたいことがあったのだ。

 筐体から出て来たのは中学生くらいの少女だった。

 しかし京真は動揺しない。

 なぜなら自分を打ち負かすほどの実力を持つ少女が、この世に存在することを知っているからだ。


「アンタがサッパーか」

「はい、そうですけど……?」

「すごかったぜアンタの技!グレネードでやられるところだった」

「じゃあ、あなたがバーサークのプレイヤーさんですか!?」

「ああ、そうだ!」

「すごかったです、さっきの動き!」

「いや、アンタの方が凄かったぜ。あの一瞬のフルガードってどうやってんだ?俺にも教えてくれよ」

「あれはですね――」


 タキアン談義。

 それ以外の意図は全く無かった。

 技術の吸収に余念のない京真は、無心で少女の話を聞いた。

 その時、透はすでにその場を立ち去っていた。


「アンタに俺の師匠を紹介するぜ」

「あなたより強い方がいるんですか!?」

「ああ。俺なんかよりずっと強いぜ。尊敬してんだ」

「へえ、すごい人なんですね」

「ところでアンタの名前は?」

「私は伊代って言います。あなたは?」

「俺は京真だ。よろしくな!」

「はい!よろしくお願いします!」


 そしてやっと、京真は後ろを振り返った。


「あれ?師匠はどこだ?」


 そこにいたのは麻尋だけだった。


「京真君、ちょっとツラ貸して」


 いつもと違う麻尋の威圧感に、京真は背筋が凍り付いた。

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