9-5 敵たおす?
透は楽しんでいた。
ゲームコーナーに設置されたモニター。
そこに映るのは現在対戦中のゲーム映像だ。
そこでは京真が戦っている。
次々に敵を倒している。
透はその姿を麻尋と二人で眺めていた。
「これどうなの?」
「良い感じ」
「ふーん」
麻尋はタキアンをプレイしたことがない。
そのため映像を見ても状況がよくわかっていない。
どれが京真のキャラクターなのかも分からないほどだった。
一方で、透はすぐに判別がついた。
以前対戦した時と同じキャラクター。
近接戦特化のバーサークだ。
京真の性格を表したような、真っ直ぐで戦闘好き。
それでいて、攻められたら弱いところもよく似ている。
透はこの戦闘を見ているのが楽しかった。
理由の1つは、京真の成長を感じたからだ。
以前の透との戦闘で露呈した弱点。
攻撃後の隙を克服しようと京真は装備を変更していた。
仮にも弟子である京真が見せた成長。
それが自分のおかげであると思うと、少しだけ嬉しいのだ。
そしてもう1つの理由は、京真の戦闘の動機だ。
京真は隣の席のプレイヤーを退かすために戦闘を始めた。
それはつまり、透と一緒にプレイするために取った行動である。
透は自分のために京真が行動を起こしたことに、喜びを感じたのだ。
この日の京真は、修行が行われると勘違いをしていた。
そのため、買い物には半ば無理矢理付き合わせた形になっている。
透はその行動に少しだけ罪悪感を感じていたのだ。
ちなみに麻尋は全く感じていない。
しかし、今は違う。
京真は成り行きで、仕方なく行動しているのでは無い。
明確な自分の意志で、透とゲームをしたいと思い行動している。
それはつまり、京真は恋人として二人で一緒に遊びたいと考えているのだ。
と、透は思っている。
もちろん京真の考えは全く違う。
京真はこの日、二人に散々遊ばれた。
弄ばれたと言ってもいい。
だからせめて自分も遊びたいと思ったのだ。
師匠である透と対戦の一つでもしなければ割に合わない。
その思いが原動力となり、京真の体を突き動かしていた。
透はそんな事を知る由もない。
ただ京真の健気な振る舞いに喜んでいた。
そして対戦に勝利した京真に労いの言葉を掛けようと思って近づいた。
きっと京真も師匠に褒められれば悪い気はしないだろう。
透の脳内には京真の喜ぶ姿が浮かんでいた。
だが、京真は予想外の行動に出た。
透には目もくれずに筐体を飛び出したのだ。
京真が一目散に向かった先は隣の筐体。
そこにいたのは幼い容姿の少女。
いや、美少女だった。
「え……」
透は固まった。
京真と少女が仲睦まじく話をしている。
その姿を眺めたことで、足が止まったのだ。
そして再び足が動いた時には、京真に背中を向けていた。
「帰る」
「りょーかい」
透は麻尋にそう伝えると、ひとり帰路についた。
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