9-2 敵たおす?

 TachyonUnlimitedアーケード。

 通称タキアンACは、最大8人で行う対戦格闘ゲームである。

 VRMMOである家庭版タキアンの派生作品であり、戦闘部分のみを抽出した本作は、京真にとって慣れ親しんだゲームだった。


「早く来い……!」


 タキアンACには同じ店舗内であれば優先的にマッチングする仕様がある。

 京真は隣の筐体が次の試合に移るのを待った。

 そして数分の後にマッチングする。

 京真はコストを考慮して装備を編成していく。

 キャラクターは近接攻撃特化のバーサーク。

 武器はガントレット。

 サブ武器には移動に便利なアンカー。

 スキルは全身を覆えるフルガードを選択した。


「行くぜオラァ!」


 戦いの幕が上がった。

 マップは学校。

 他のマップと比べ非常に狭いのが特徴だ。

 近接攻撃の得意な京真とは相性が良かった。

 ランダムな位置に転送されたプレイヤーはマップを確認する。

 その定石を狙うのが京真のいつもの手だ。

 京真はマップよりも先に目視で索敵を行い、最も近い敵に高速で接近する。

 今回は両腕に装備しているアンカーを利用し、立体起動で移動した。

 残り数メートルのところでようやく接近に気付かれる。

 相手はガンナー。

 サブマシンガンを乱射して追い払おうと試みる。

 だが、京真には相手のキャラクターと装備を確認する時間が十分にあった。

 当然、接近に気付いた相手がどのように動くのかも想定している。

 京真はアンカーを利用して銃弾を回避。

 その上で難なく背後へと回り込み、撃破に成功した。


「まず1体」


 そして透との戦闘を思い出す。

 前回の対戦では初動での戦闘後を狙われた。

 その反省を活かし、事前にフルガードを発動する。

 攻撃が来るか来ないかはわからない。

 だが、警戒するに越したことは無いという判断だ。

 フルガード中は動けないがこの時間を利用してマップを確認する。

 現在地は第二グラウンド。

 ここはマズイ。

 京真はそう判断し、移動を開始した。

 こんな開けた場所に立っていては校舎から狙い撃ちにされる。

 京真の予想は的中した。

 屋上からの狙撃が肩を掠めた。

 フルガードを解いた瞬間を狙っていたのだ。

 京真は狙撃を警戒しながら物陰を利用して校舎に接近していく。

 高所にいる狙撃手が相手ならば、足元に張り付けば射角がなくなり手が出せない。

 一先ずの安全を確保できた。

 マップを確認した時の生存数は6。

 京真以外にも速攻を仕掛けたプレイヤーがいるということだ。

 その事実は、何故か京真の闘争心に火を付けた。


「俺と戦おうぜぇ!」


 京真はアンカーを外壁に突き刺し、屋上を目指した。

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