6-3 倒したい奴?

「お前センス無いよ。やめちまえ、雑魚」

「なっ……!?」


 男は京真に暴言を吐いた。

 確かに京真はこの男に2度負けた。

 しかし、京真もオンライン大会で優勝するほどの実力者だ。

 そのプライドが男の言葉を許さなかった。


「もう一度、俺と勝負しろ!」

「時間の無駄だよ。雑魚と遊ぶなんて」

「タイマンだ。それならすぐ終わるだろ」

「じゃあさ、負けたら勝った方の言う事を聞くって条件にしよう」


 そうしてバトルが行われた。

 京真は自分の実力をすべて出し切った。

 それでもなお、男に土をつけることができなかった。

 しかし、それ以上に京真は男の実力に見惚れていた。

 動き、速さ、キレ、技術、どれもが遠く及ばない。

 京真は完全に男のプレイの虜だった。

 憧れと言い換えてもいい。


「強い……」


 その一言がすべてだった。


「おいゴミ。早くデータリング出せ」


 それは勝者からの命令だった。

 京真は大会のために持参していたタキアンのセーブデータを渡す。


「おめでとう。さっきのが引退試合だ」


 男はデータリングを破壊した。

 何度も何度も踏みつけ、二度と再生しないように念入りに破壊した。


「雑魚はさっさと消えろよ」


 男は去っていく。

 しかしその表情は曇ったままで、独り言を呟いていた。


「なんでこの俺が大会に出れないんだよ……!」


 悔しがる京真の耳にもその言葉が届いた。

 そして、男の実力とその言葉から、東日本大会の参加者だと確信した。


 後日、京真は知った。

 東日本大会で不戦敗した2名のうちの1名が京真。

 もう1名が優勝候補のゴッドアレスというプレイヤーだった。

 つまり、京真の魂ともいえるセーブデータを破壊した男の名は、ゴッドアレスという事が分かったのだ。


 京真は許せなかった。

 セーブデータを破壊されたことでも、暴言を吐かれたことでもない。

 そんな横暴をする奴が自分よりも強いことが許せなかった。

 そして、そんな男の完璧なプレイに京真は憧れてしまった。

 だから京真は強くなると決めた。

 誰よりも強くなり、ゴッドアレスを倒す。

 そして、ゴッドアレスをまともな人間にする。

 

 京真はあの日の雪辱を晴らすため、そして、憧れてしまった男を超えて、その心を正すために最強になることを誓ったのだ。

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