6-2 倒したい奴?
それは京真が中学2年の冬のことである。
VRMMOゲーム『Tachyon Unlimited』通称タキアン。
その東日本大会の日のことだった。
京真はオンライン大会で優勝し、出場権を獲得していた。
会場は東京都内。
試合の開始は午後6時。
当日の移動でも会場へは余裕で到着できる。
だが、この日は天候が悪かった。
予報を大きく超える雪が降った。
これにより飛行機は飛ばず、新幹線は仙台で止まった。
京真は仙台で足止めを食った。
代替の移動手段はない。
京真の大会出場は不可能になった。
「クソ……!」
天候という人智を超える敵に人は抗うことができない。
誰にぶつけることもできない苛立ち。
京真は自分の無力さと怒りを抱えながら彷徨った。
そして辿り着いたのはゲームセンターだった。
結局京真は、怒りをタキアンにぶつけるしかなかったのだ。
所詮まわりは一般人。
大会のようなひりつく緊張感は味わえないがそれでもいい。
ただ壊したい。
蹂躙したい。
そう思ってプレイを開始した。
「そんな、馬鹿な……」
京真は敗北した。
完膚なきまでに叩きのめされた。
京真を倒したプレイヤーはそのまま全員を倒して勝利した。
「ありえない……!」
京真は再戦した。
次は油断しない。
最初から全力で潰しに行く。
しかし、勝つことができなかった。
勝利したのは同じプレイヤーだった。
「おい」
京真は筐体の外から話しかけられ外に出た。
その男はぼさぼさの髪にロングコートを着ていた。
「お前がさっきのバーサークだろ」
その男は京真のキャラクターを言い当てた。
それで気が付いた。
この男が京真を倒したプレイヤーだと。
「だったらなんだ」
京真は答えた。
その言葉は喧嘩腰にも聞こえる。
だがそれは仕方のない事だった。
なぜなら話しかけてきた男が敵意を放っているからだ。
そして敵意を込めた言葉を吐いた。
「お前センス無いよ。やめちまえ、雑魚」
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