5-2 弟子を取る?

 京真は緊張していた。

 クレスメイトの美少女二人に呼び出されたからだ。


 京真は教室で麻尋に話しかけられた。

 17時にファミレスの前に来て欲しいとのことだった。

 弟子入りについての話。

 そう言われれば京真は行く他に選択肢がない。

 そして電話で呼び出された京真は二人の待つ席へ移動した。

 

「ちょっと近くねえか?」

「そうだね~。ちょっと狭いよね~」

 

 隣に座る麻尋の距離感が近く、彼女の小さな肩が触れている。

 離れろ、というニュアンスで言ったにも関わらず、麻尋は更に距離を詰める。

 良いにおいがする。

 京真は鼻孔を擽る優しいシャンプーの香りに惑わされそうになるのを必死に耐えるが、ソファの奥に案内された京真は逃げ道を塞がれどうすることもできない。

 それ故に、女子に免疫のない京真は赤面することしかできなかったのだ。


「そこ!ベタベタするな!」


 二人の様子を見かねた透がキレる。

 だが、そんな透の顔もまた赤面していた。

 そんな透の行動を気にも留めず麻尋は攻勢を強める。


「おい!なに触ってんだ!」


 テーブルの下で、麻尋は京真の手に触れる。

 そして麻尋の小さな手が京真の大きな手の甲を上からそっと包み込む。


「あれ~?もしかして京真君、緊張してるの~?」

「全然してねえわ!」


 京真が必死に強がりを見せる。

 しかし、当然ながらそんなものに騙される麻尋ではない。


「嘘。だって京真君、こんなにドキドキしてるもん」


 麻尋はその細い指を京真の指に絡ませ、両手で力強く握った。

 得も言えぬ恥ずかしさに悶える京真とそれを見て楽しむ麻尋。

 その様子を見て、黙っていない者がいた。


「私の時とリアクションが違う!」


 その言葉の主は透だ。

 透は昨日の京真の行動を思い返した。

 だが、その時の京真は全く恥じらいを見せていなかったのだ。

 それはつまり、透には麻尋と違って魅力がないと言われているようなもの。

 少なくとも透はそう感じ、悔しくなったのだ。


「透も手を握ったの?」

「ひざまずいて向こうから握ってきた」

「ふーん」


 それなのに今みたいに照れたりしてなかった。

 透はそう続けようと思ったが、麻尋の行動を見て閉口した。

 麻尋は握っていた手を離すと、今度は腕を組み始めたのだ。


「お、おい、お前!」

「腕を組むのは私の方が先かな?」

「な、何してんの麻尋!?」

「なにが~?」


 麻尋はわざとらしく分からないフリをして京真の肩に頭を寄せる。


「何照れてんだ!しっかりしろ変態!」

「照れてねえわ!」


 透はされるがままになっている京真に喝を入れる。

 京真は透の言葉を否定するが、誰がどう見ても照れまくっていた。


「あれれ~。透ちゃんもしかして嫉妬かな~?」

「してないわ!」

 

 麻尋が憎たらしい声色で透を挑発する。

 透は麻尋の言葉を否定するが、誰がどう見ても嫉妬していた。


「ふーん。そっかー」


 だったらこれならどうだ。

 そういった態度で、麻尋は透にはない武器を使用する。

 それは二つの大きな果実。

 麻尋は組んでいる京真の腕に、それを押し当てようとした。

 これで、悩殺間違いなし。

 麻尋は確信していた。

 

 だが、威力が強すぎた。


「それー!」

「お、おい、やめろ!」

「巨乳なんかに負けるな、変態!」


 3人の思いが交錯した時、店内に大きな音が響いた。

 京真が気を失い、テーブルに頭をぶつけた音だった。

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