2-4 初デート?

「どうしてこうなった」


 透はゲームの筐体の中で一人呟いた。

 全身が覆われるコクーン型のシートに寝そべりプレイを行う、フルダイブ型VRゲーム、アーケード版タキアンの筐体である。


 京真に手を引かれるままに訪れたこの場所で宣戦布告をされて、半ば無理矢理ここに押し込まれた透は不機嫌そのものであった。


「デートでこんなとこ来るか、普通」


 一応言っておくとデートではない。

 透は誰にも聞こえないことをいいことに心の声を口に出した。

 タキアンは世界的にも人気のゲームである。

 そのアーケード版も稼働からしばらく経つがその人気は衰えない。

 全国の猛者と最大8人でオンライン対戦する今作は、事前に用意されたキャラクター、武器、スキルからコストを考慮して装備編成し、戦うというシステムだ。

 透はこのゲームをプレイしたことがあるため、手慣れた操作で編成を終えた。

 バトル開始の合図が鳴る。


「行くぜオラァ!」


 隣のシートから京真の声が聞こえた。

 一人楽しんでいる様子の京真に、放置されていると感じた透は、その苛立ちをゲームにぶつけ、京真を含めた7人のプレイヤーをボコボコにした。


「ふぅ……」


 試合が終わり、すっきりとした気持ちで筐体の外に出ると、隣のシートでプレイしていたはずの京真が仁王立ちで待っていた。


「な、なに……?」


 気に障ることでもしただろうかと、恐る恐る尋ねる透。

 すると京真は突然跪き、透の手を握った。


「ふぇ!?」


 突然のことに驚き後退るも、背後の筐体によってこれ以上は下がれない。


「一目見た時から気になってた」


「い、いきなり何を……」


「お前みたいな奴を探してたんだ」


 京真の突然の言葉に戸惑う透は、麻尋から教わった言葉を思い出す。

 

(さっきまでの俺様系から一転して下手に出るなんて……。まさかこれが『ギャップ萌え』ってやつなの!?)


「完全に惚れちまった」


「私なんかでいいの……?」


 京真の目を見て透は尋ねる。


「お前しか考えられない」


 その目をしっかりと見つめ言葉を返す京真。


「わ、私も――」


「最期まで言わせてくれ」


「うん……」


 透は顔を赤らめながらも京真の目を見つめる。

 真っすぐで綺麗な目だと透は思った。


「俺を、お前の……」


(人前で告白なんて恥ずかしい。けど、ちょっと嬉しいかも……)


 周囲からの注目を集めている状況に、透は恥ずかしくて逃げ出したいという気持ちを抱いたが、それでも京真の言葉を聞きたいという気持ちが上回っていた。


 だが、京真の言葉は透の想像とは違った。


「弟子にしてくれ」


「は?」

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