2-3 初デート?
透は動揺していた。
ニヤニヤしながら鼻歌を歌う姿をクラスメイトに見られたからだ。
誰よりも早くここに来たという自負。
それによって知り合いが誰もいないと思って油断していた。
恥ずかしくて仕方がない。
だが何故、千堂京真がここにいるのだろう。
その疑問で京真の言葉を思い出す。
「おい後鳥羽、お前も――」
やっと気が付いた。
京真もまたVWOを買うためにこの場所を訪れたのだと。
透と同じものを求めて、同じ場所に来たのだと。
「これって……」
そして透は思った。
放課後に男子生徒と二人きりで買い物に来ている。
これはつまり、『放課後デート』なのではないか、と。
当然、間違いである。
透は中学時代、全くと言っていいほど恋愛に興味が無かった。
そんな彼女は現在、普通の女の子に異常に強い憧れを抱いている。
よって思考回路が世間一般とはかけ離れていたのだ。
同じものを求め、同じ場所に来た。
この事実だけをもとに辿り着いた結論。
それが『放課後デート』だ。
もう一度言うが、当然、間違いである。
しかし透はそんなことにも気付かない。
人生初デートである現在のシチュエーションを噛みしめ、舞い上がっていたのだ。
「お前、可愛いな」
惚けていた透は、耳に入った京真の言葉を頭の中で再構成しハッとする。
(い、いきなりそんなこと言うなんて、どういうつもり!?でも悪い気はしないし……。いや、ダメだ!そんな簡単に気を許すな透!いくらカッコよくてもコイツはヤバい奴なんだから関わるべきじゃない!でも、今日一日くらいは……)
透は耳まで赤くなりながら、心の中で葛藤する。
「俺と付き合え」
(え……、嘘でしょ……。これは告白ってやつなのでは?いや、絶対ににそうだ。前に麻尋に教わった、『俺様系男子』の告白に違いない。なんて強引なの……。でも、思ってたよりは嫌いじゃない、かも……)
透が返事を返すより早く、京真が透の手を取って歩き出した。
(どこに連れていくつもりなの!?まさか、人気のない所に連れて行って二人の愛を確かめ合うつもりなんじゃ……!?そ、そんなのはまだ早い!もっとお互いをよく知ってからじゃないと……)
などと透は想像していた。
だが、実際はそうではなかった。
透が連れてこられたのは、併設されていたゲームコーナーだった。
「俺とバトルしろ!」
京真の言葉がゲームコーナーに響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます