1-3 ヤバい奴?

「透~、さっきの何さ~」


 ホームルームが終わり、透のもとに駆け寄ったのは金髪の少女だった。


 ここ、私立柴北学園は進学校ではあるのだが、勉強が出来ればある程度の自由が保証されるという校風である。


 そのため、常識の範囲内であれば髪型、髪色、制服の着こなし、アルバイトなども当人の自由なのだ。


 そして、この皆越麻尋もまた、自由を求めてここに来た者の一人である。


 金髪のツインテールに短いスカート。

 首元のボタンは開けられ、腰にはカーディガンが結ばれている。

 身長は透よりも少し高いくらいだが、モデルのような体型の彼女にはとてもよく似合っていた。


 それでも普通の高校では注意されるような格好だろう。

 その点を気にすることなく過ごせるというのが、麻尋がこの学校を選んだ理由なのだ。


「麻尋ぉ……」


 透は目を潤ませながら、近づいてきた親友に抱きついた。


「なあに~?不良少女の透ちゃん」

 

 意地悪く透の額を突っついて笑う麻尋。


「違うってば!あの時はちょっと反抗期だっただけなんだって!」


 思い出したくない過去の話を持ち出されて、小声で怒鳴る透。


「だから高校デビュー頑張ったんだもんね~。偉い偉い」


 麻尋はわしゃわしゃと透の頭を撫で回し、透は嫌々ながらも成すがままにされていた。


 会話の聞こえない遠くの方で眺める男子生徒からは、美少女二人の可愛らしいスキンシップに見えるだろう。


 だが、実際はそうではない。


「今日のために受験勉強も頑張ったし、女子力も磨いたんだから」


「うんうん。勉強教えた甲斐があって良かったよ~」


「それに麻尋と同じクラスで本当に良かった!」


「ん?ちょっと違うくない?」


「え?あっ……!」


「ちょっと言い直してみて」


「はい!麻尋様に勉学を教えていただいたおかげで入学できてとても感謝しています!同じクラスだなんて光栄です!」


「良くできました~」


麻尋は透の髪の乱れなどお構いなしに撫で回す。

この二人の間には、完全な上下間系があるのだ。

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