第12話 封印解除

 封印解除。

 そのための準備は既に終わっている。


「ほいさ」 

 

 僕は五つの冥魂晶宝が飾られている祭壇へと魔力を流し込み、仕込みを起動する。

 あまりにも膨大すぎる魔力が世界を包み、世界全体を震わせ始める。


「……ッ!?こんな力……どこからッ!?」

 

 天空より湧き上がってくる強大な魔力。大いなる空を埋め尽くす巨大な魔法陣。


「封印解除」

 

 僕が流し込む魔力はほんの少しでいい。

 ただそれだけで何十億と積み重ねた数多の魂の結晶が少量の魔力を増幅させ……圧倒的な魔法を発動してくれる。

 

「……あぁ」

  

 空間が歪み……遥か高次の次元へと飛ばされていたお姉ちゃんを封印する巨大な琥珀がこの世に滲み出る。


「壊れろ」

 

 琥珀へと大きなヒビが入り、そのヒビは徐々に大きくなっていく。

 そして、とうとう吐く

 

 この世界に舞い降りるお姉ちゃん。

 それと同じようにすべてを呑み込み膨大する闇がこの世界へとその姿を表す。

 闇は一瞬でお姉ちゃんを呑み込み、その暴食性を開放する。

 

 空間が歪み、ひび割れ、闇が……拡大していく。

 

 封印される前にお姉ちゃんが施した自分の封印が解除されたときのための抵抗を闇は容易く呑み込んで……破壊せんと欲す。


「ほいさッ!」

 

 そんな闇に対して僕は梨々花が僕に撃ち込んできた世界最強の魔法に己の魔力を込めてちょっとした加工をした奴を何もない空間へと撃ち込んだ。


「何事ッ!?」


 世界最強の魔法が何もない空間へとぶつかり……大きな亀裂を、空間を破壊し、この世とは違う空間へと場を映してしまう空間の穴を作り出す。


「ほいそー」

 

 僕は無秩序に広がっていく世界のすべてを呑み込まんとする闇を誘導して、ゆっくりとひび割れた空間の中へと入れていく。

 闇の誘導は遥かかつてもやっていた手法であり、そこまで難しい技じゃない。


「は?」

 

 あっさりと消えた闇を前にした梨々花が呆然と口を開ける。


「よし」

 

 僕は梨々花にかけていた魔法を解き、自分に強化魔法をかけていく。


「それじゃあ、ちょっとさ闇を消し飛ばしてくるわ」

 

「は?」

 

 僕は闇が消えていった空間の亀裂の中へと入っていた。

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