第9話 梨々花の修行Ⅱ
レインたち四人はアルベトの撒いた種を……三兄弟の力の一部をその体へと内包している。
その力を完全に開放し、我が物にすることが出来ればアルベトと最低限戦えるようになるというのが梨々花の計算だった。
「嘘……」
だからこそ梨々花は四人が己の力を思うがままに開放し、戦えるようにするための訓練をするつもりであった。
しかし、そんな訓練するまでもなく、四人はさも当たり前かのようにその力を引き出した。
「これ……ただの勘違いだと思っていたのだけど。本当に……ふふふ」
「……」
「ふふふ。これがあなたのお姉ちゃんに対する愛なのね!」
「おぉ。これは良いものだな。それにしても随分と意味のわからない仕掛けを施す。こんなの普通は気付けぬぞ……」
愛に狂っている四人が自分の中にあるアルべトを影に気づかぬはずがなかった。
彼女たちはとっくに気づいていて……それを気の所為としてまともに向き合ってこなかっただけなのである。
「すごい……!すごいわ!こんなにうまくいくなんて!やっぱり愛の力は偉大なのね……!」
テンションの上がっている梨々花を見て、四人は疑問に思う。
アルベトが自分たちに自らの手で撒いた種を使って勝てると思っているのだろうか?、と。
何をどう考えても自分たちがアルベトから渡された力を使ってアルベトと戦うのは作戦通りでしかないだろうに。
彼女たちにとってはどうでも良いのだから。
新しいライバルが増えるのは嫌で、止めたい。
しかし、彼女たちにとってアルベトの道具として何もかもアルベトの手のひらの上で転がされるというのも実に甘美であるからだ。
「さぁ!実際の訓練と行きましょう!力を引き出し、完璧に操り我が物に出来てからがようやく合格!張り切っていきましょう!」
梨々花はそんな四人の疑問には気づかず、己の持つあまりにも膨大すぎる力を開放した。
天才的な頭脳を持ち、長い間この世界の裏側に君臨し続けてきたアルベトとは対象的に、梨々花は結構アホの子なのである。
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