第7話

「やっぱりここに居たんだ。パパ」

 

 僕の古巣。

 長き時に渡って、己の拠点として活用していた我が家に小さな侵入者が、ニーナがやってくる。


「やぁ。ニーナ。何の用かい?」

 

 僕はすてこらさっさと僕の方へと着て、椅子へと腰をおろしている僕の膝に己の小さなお尻を乗せるニーナの頭を撫でながら、口を開く。


「……多分、パパがここに居るってことは、私の情報なんて要らないよね」


「いや、そんなことないとも。是非聞かせてほしいな」


「うん。わかった。えっとね。梨々花たちがパパの計画を邪魔しようとしているよ?」


 僕の言葉を聞いたニーナが簡潔に自分の知っている情報を教えてくれる。


「でも、多分最初から知っていたよね……。私しか知らない場所にパパが居たってことは」


「うん。そうだね。……それでも、ニーナが僕の予想が間違えではなかったっていうことを教えてくれるのは非常に助かるんだよ」

 

 僕はニーナにそう話す。

 梨々花の計画。そんなもの予想出来ていた。ニーナが僕の計画を潰すのに反対して、情報を伝えようと僕の元まで来ることを。

 だからこそ、ニーナを魔界へと送る前にわざわざここで作戦会議を行い、ここで待っていたのだ。


「ほんと?……えへへ。それなら良かった。それで?じゃあ、私は何をすればいいの?」


「何もしなくて良いとも。ただ、梨々花の計画に協力してくれ」


「……良いの?」


「あぁ。そうだ。僕の計画では、梨々花が僕に歯向かってくることも織り込み済みだ」

 

 前回は梨々花に邪魔された。今回は梨々花の邪魔ですら利用してやるさ。

 

「そう。じゃあ、私も全力でパパの計画を邪魔するね」


「うん。お願いね」

 

「じゃあ。パパ。私はそろそろ戻るね……これから毎日こっそり私だけに会いに来てね?」


「気が向いたらね」


「うん。待っている」

 

 僕の膝から降りて出口へと向かっていくニーナを僕は見送る。

 彼女も長い間ここに居るわけには行かないのだろう。本当は一ミリも離れたくないというニーナの意思が彼女の背中より感じ取ることができる。


 いやー。それにしても。

 余の記憶を失った僕があれほどヤンデレ製造機になるとは想定外だった。なんであんなにもヤンデレばかりになったんだ?

 まぁ、そうなったからこそ僕の作戦が上手く行くって言うことではあるんだけど。


「ふんふんふーん」

 

 余は己の計画の成功を確信した。

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