第30話

 中央騎士団長もずっと発狂しているわけにもいかない。

 しばらくすれば元の状態に戻り、真面目な作戦を考え始める。


「そもそも魔王は多数の軍勢を率いているのか?」


「多分少数じゃないかしら?どうせ多くを運んでも海の藻屑となるだけよ。……いくら魔王と言えども船を守るのは不可能だと思うわ」

 

 これはフラグでも何でもなく事実だろう。

 魔王と勇者の力は大体同じくらい。勇者の攻撃を前に船を守っている余裕なんて無いだろう。


「なるほど……それでは、魔王については少数精鋭を向けるのは最適か」


「魔王戦は私に任せてほしいわね」


「そろそろレインやレルも起きそうだし……僕とマキナとレインとレルの四人で対魔王は十分何じゃないかな?」


「それだけで問題ないのか……?」


「うん。多分ね。……というかこれ以上増えても足手まといだと思うよ」


「……自国の姫より劣る騎士団長、か……」

 

 中央騎士団長が自嘲気味につぶやく。


「いや。こんなことを気にしている場合ではないな。魔王に関しては君たちに任せよう……で、あるならば、だ。我々がすべきは未来への一手……魔族の住まう大陸を狙う、か。確かニーナは今も動いているんだったよな?」


「そうだね」

 

 僕は中央騎士団長の言葉に頷く。

 ニーナは今もなお魔族の国で暴れている。毎日魔法で連絡しているので間違いはない。


「なら、私たちはその加勢に行こうとしようか。小さな少女にずっと任せっきりになっているわけにはいかないだろう。魔族の国を叩き、王を殺す。さすればさすがの魔族であっても……耐えきれまい」

 

「そうね。それが一番ね。既にこの大陸の魔族は叩き出せそうだものね」


「あぁ、そうだな。だが、問題になってくるのはどれほど運び、どう運ぶか、だな。一応上陸のための船なら用意は……旧アレイスター帝国がしてくれているが……」

 

「……あの帝国の用意なら問題ないわね。じゃあ、そういうことで良いかしら?私はもう会議なんて、飽きているのだけど」


 そう話すマキナの手は、股間部に近づいているように見えた……。

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